『ジョン・カーター』55点(100点満点中)
John Carter 2012年4月13日(金)2D/3D同時公開 2012年/アメリカ/カラー/133分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
監督・脚本:アンドリュー・スタントン 脚本:マイケル・シェイボン 原作:エドガー・ライス・バローズ 出演:テイラー・キッチュ リン・コリンズ マーク・ストロング キーラン・ハインズ ウィレム・デフォー

≪期待が大きすぎて不発≫

ディズニー生誕110周年記念作品、社運をかけた超大作として登場した本作は、しかし興業的には悲劇の一本となってしまった。

1868年、元南軍のジョン・カーター(テイラー・キッチュ)の日記を手にしたバローズ(ダリル・サバラ)は、その内容に驚愕する。そこには高度な文明のもと、多民族が暮らすバルスームなる惑星でカーターが繰り広げた様々な冒険が描かれていた。なぜかそこに瞬間移動したカーターは、その惑星においては驚異的な運動能力を持っていたことで、星の運命がかかる戦いに参加することになったのだった。

映画「スター・ウォーズ」や「アバター」に多大な影響を与えた原作「火星のプリンセス」の実写化として期待されていた企画だが、完成してみれば映画「スター・ウォーズ」や「アバター」の二番煎じなどと言われる始末。いや、こっちが先なんだと作り手は言いだろうが、ビジュアル的には確かにそうとしか見えないのは気の毒なところである。

結局こういうものは、先に出したもの勝ち。誰が映画化するかでもたもたしている間に、アバターがあれほど大ヒットしてしまったのも痛かった。

さんざん後発作品が改良して、発展型も登場済み。古い古いその元ネタを今更映画にしたといっても、よほど映像面での進歩などが見られなければ、「どこかで見た、ありふれたファンタジー」なんて感想になってしまう。なんとかの原点ネタが、難しい所以である。

主演のテイラー・キッチュは、バトルシップに乗ってエイリアンと戦ったり、こっちでは肉弾戦で戦ったりと今週は一番忙しい俳優だが、まだスター性を発揮するには至っていない。となるとこの作品の売りは、「後発のSF作品に影響を与えた世界観」しかないわけだが、そこがパッとしない。

世界観を楽しませる系の映画が陥りがちなミスは、上映時間が長いこと。物理的に長い時間、観客を映画世界にとどめおくことによって、世界感になじませようとしたいわけだが、そうなっては本末転倒。詰め込めないほどに伝えたい要素があるからやむなく長くなるのが、長時間映画のあるべき姿。本作のように整理が下手で長くなってしまった場合、世界感にどっぷりひたる気分にはなかなかなれない。

こうした作品の興業を下支えする子供観客にとっても、見た目はまあ良いとしても、ストーリーが意外と複雑だし、展開にスピード感もなくあまり面白いと感じるものではないだろう。アメリカ以外ではそこそこ受けているというが、日本ではどうなるか。



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