『劇場版 SPEC〜天〜』40点(100点満点中)
2012年4月07日(土)全国東宝系ロードショー 2012年/日本/カラー/119分/配給:東宝
監督:堤幸彦 脚本:西荻弓絵 出演:戸田恵梨香 加瀬亮 福田沙紀 神木隆之介 栗山千明 浅野ゆう子

≪ドラマ未見者にとっては地雷≫

興行面での好調な出だしやマスコミで繰り返されるプロモーション、ハリウッドでリメイクが決定したとの華々しいニュースから、「劇場版 SPEC〜天〜」をゴージャスなエンターテイメント作品と勘違いしてる人がいたら要注意である。この映画は、姉妹編「ケイゾク」から続くドラマ版のファンたちが集まってこっそり楽しむ、本来マイナーな扱いがふさわしいB級作品である。

刑事部が手におえない事件を担当する公安部の"ミショウ"こと未詳事件特別対策係の天才捜査官・当麻(戸田恵梨香)は、洋上のクルーザーという"密室"でおきたミイラ化殺人の報を受ける。うずく左手を気にしつつ、瀬文(加瀬亮)とともに捜査を続ける彼女の前に、意外な人物が姿を現す。

スペックホルダーと呼ばれる超能力者が複数登場し、公安部側の捜査官と激しい戦いを繰り広げるSFアクションの映画版。

スペックというのは、人によって種類が異なる超能力のことで、体の一部が変形したり、強力なのでは時を一時的に止めてしまうようなものまである。どこかで誰かが弓矢で増やしているわけではなさそうだが、中には犯罪に能力を使うやっかいな連中がいるので主人公たちも気が抜けない。この映画版では、彼らがかつてない強力な敵と対峙することになる。

ファティマの予言だの御前会議だのといったオカルトじみた世界観に加え、内輪ネタやパロディーギャグの連発で、ドラマ未見者はほとんど振り落とされてしまう特殊なノリ。よくぞこれが22時台に放映されていたものだと驚かされる。

本来なら週末の深夜扱いが妥当なレベルで、とてもじゃないが映画にまでして全国拡大公開で一般人を引き込む魅力はない。というより魅力の種類が違う。前述したように、ファンたちがこっそり楽しむのがふさわしい、そんなニッチな印象を受ける。

戸田恵梨香演じるヒロインをはじめとするキャストにも特段の魅力があるわけでなく、海外の優れたSF作品にあるような含みがあるわけでもなく、各種設定や世界観にも特筆すべきオリジナリティはない。よって、対象年齢はせいぜい高校生あたりまで。あるいは、高校生あたりまでを対象にしたドラマを楽しむ事ができるおじさんやおじいさんも含まれる。

見ているのが苦しい、悪ふざけのようなギャグネタを何とかスルーできたとしても、その後に特筆すべき見せ場があるわけでもない。キモとなるバトルシーンも、映画レベルに達していると感じたものはなし。

こうした超能力ものはハリウッドにおいても、チープにおちぶれるか一級品のエンターテイメントになるか、極端に分かれることが多い。その分かれ目のかなりの部分は作り手のセンスと教養に依存する。ハリウッド版が製作される日がいつかくるならば、後者に生まれ変わることを切に願う。

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