「長ぐつをはいたネコ」60点(100点満点中)
Puss in Boots 2012年3月17日、全国3Dロードショー(一部劇場をのぞく) 2011年/アメリカ/カラー/90分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
監督:クリス・ミラー 声の出演:アントニオ・バンデラス サルマ・ハエック ウォルト・ドーン ゼウス・メンドーサ

猫萌えムービー

「シュレック」シリーズの人気キャラクター、長靴をはいた猫は、その可愛らしい外見に野太い声というギャップにより、主人公を超える程の人気とインパクトを与えてくれた。「長ぐつをはいたネコ」は、その人気にあやかったスピンオフ作品である。

猫のプス(声:アントニオ・バンデラス)は、怪物のシュレックに出会うずっと前からお尋ね者として追われていた。だがもともとプスは、育った村で英雄としてたたえられていた存在だった。当時彼が相棒として信頼していたハンプティ・ダンプティ(声:ザック・ガリフィナーキス)とも、いまや犬猿の仲。いったいプスの過去に何があったのだろうか。

本作はまず第一にキャラクター重視のコンセプトで作られただけあって、主人公の猫は魅力たっぷり。正義感が強く剣の腕もたつが、人を信じすぎてしまうきらいがあり、意外にも簡単にだまされてしまったりする。そんなちょっと脇の甘いヒーロー、それがプスだ。

癖のある登場人物の中にあってこの猫は純情一本気で、恩を感じた相手に対してはどこまでも信じてついていく。そんな無償の愛と、弱いものに頼まれるとつい断れない優しさを持っている。まるで私のような性格で、誰が見ても魅力がある。

この物語は、そんな主人公が周りのろくでなしに振り回されながら、それでも許し続ける物語である。

身が軽い猫だから、アクションはさすがのハイスピード。思ったほど剣の戦いは多くはないが、それ以上に激しいスタントの連続である。それに加えて彼の生い立ち、たとえばトレードマークの帽子やブーツの入手経緯などが明らかになる。

徹頭徹尾、このキャラクターに興味を持っている、またはすでに大きな愛情・愛着を期待している人のためのキャラクタームービーといえる。アントニオ・バンデラス演じるこの猫(日本語版では竹中直人)に対し、特別な思いを持っている人は必見といえる。

ハンプティ・ダンプティやジャックと豆の木など、おとぎ話の要素を融合させたストーリーは、そうした絵本などに親しんだ子供たちにとっても楽しめる。だが基本は、やはりシュレック・シリーズからの引き続きのお客さん、そして猫好きの人々である。

ところで、よく犬好きと猫好きで二分されるというが、気まぐれな猫を愛し続ける人というのは、支えが必要なほど寂しがり屋の人が多い。さびしんぼう最後のよりどころであるインターネットでは猫画像や猫ネタの人気が高いが、その理由もよくわかる。

そもそも犬を好きな人は自分がリーダーなのであり、それに忠実な動物を愛いやつと思っている。だが猫の場合は、はたから見るとまるで猫が御主人様のようである。私は犬好き派だが、佐々木希のような美人をご主人様として敬う快楽は理解できるので、猫好きの気持ちも多少はわかる。たいした見返りがあるわけでもないのによく尽くし続けるものだと思うが、かわいらしいその挙動を見ているだけで、彼ら彼女たちは満足なのだろう。

そうした意味で「長ぐつをはいたネコ」は、なかなかのポテンシャルを持った作品といえる。

アニメとして特段優れたものがあるわけではないが、普通に楽しいしよくできている。3Dもどこか地味だが、出来は決して悪くない。

ミルクを飲む時に急にかわいくなったり、反射する光をつい本能的に追いかけてしまったりといった、おなじみの萌えシーンは少々あざとさを感じなくもないが、猫好きにはたいして問題あるまい。

そんなわけで、われこそは猫派と自覚する人は、過剰な期待を抱かずにいけば、少なくとも損をした気にはならずに帰ってくる事ができるだろう。

絵画 「"Leche" Puss in Boots Fine Art」 「ミルクを1杯頼む」 (長ぐつをはいたネコより) DreamWorks Animation Fine Art ドリームワークスアニメーションファインアート
こいつは究極のファンアイテムだ……。
長ぐつをはいたねこ (世界傑作絵本シリーズ・スイスの絵本)
このあたりは基本として。


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