『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』45点(100点満点中)
Johnny English Reborn 2012年1月21日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー! 2011年/アメリカ・フランス・イギリス/カラー/101分/配給:東宝東和
監督:オリバー・パーカー 脚本:ハーミッシュ・マッコール 出演:ローワン・アトキンソン ジリアン・アンダーソン ドミニク・ウェスト

≪タイトルは爆笑だが≫

「ジョニー・イングリッシュ」(03年、英)の続編である本作には、「気休めの報酬」とのサブタイトルがついている。007シリーズのファンであれば思わずくすっと笑ってしまうであろう。題名ひとつで笑わせてくれるとは、とりあえず掴みはオッケー、である。

かつてイギリスのピンチを救ったイングリッシュ(ローワン・アトキンソン)だが、今では手ひどい失敗がもとでチベットの僧院に引っ込んでいた。そんな彼の前に再びMI7の指令が下る。イングリッシュに託されたのは、英中会談を控えた中国首相の暗殺計画阻止。久々の大仕事に奮起するイングリッシュだったが、案の定、やることなすことすべてが裏目。大事な任務をことごとく失敗し、場を混乱させるばかりという始末であった。

前作同様、ローワン・アトキンソン得意の身体を張ったギャグの数々が楽しめる。ミスター・ビーン役で彼のファンになった人にとっては、そのコミカルな動きをたっぷり味わえる。

しかし意外なのは、これまでほぼ無言で動き一つで笑いをとってきた彼が、本作では非常に雄弁であること。セリフが多いばかりでなく、自らドラマを進行させる。このあたりに少々違和感を感じる人もいるかもしれない。キャラクターの深みを出そうとの演出かもしれないが、個人的にはあまり効果を上げていない気がする。

そもそもこの映画は、イギリス映画界が総力を挙げ、大予算で、アクション満載ながらバカバカしいことをやるという、そのマヌケさを笑う作品である。じっさいアクションのいくつかはさぞお金がかかっているだろうと思わせるもので、ローワンも自らスタントシーンを演じている。格好は悪いがサービス精神だけはイーサン・ハントのトム・クルーズ並。それだけで、一つの見所となっている。

だが中途半端にしゃべるがために、全体的にシュール感が薄れ普通のアクション映画になってしまった。やはり本作のジョニー・イングリッシュのキャラクターは普通すぎて物足りない。もっと徹底的、積極的に失敗をし、その突飛さで笑わせて欲しいところ。

この映画のギャグはどれも不発ぎみで、多少笑えても単発で終わってしまう。次から次へと矢継ぎ早に笑いを積み上げていくといった、すぐれたコメディー映画としての流れの良さがない。混乱の中、相手の腕をひねりあげたと思ったら、それは自分の腕だった……といった、"ありえない"意外性"の笑い。こうしたものをもっときわめて欲しいと思う。そこが、ローワンの得意分野でもあるだろうから。

英国アカデミー賞をとるようなスタッフが、こんな馬鹿げたモノを作る。サーの称号を持つローワン・アトキンソンが、こんなに馬鹿なことをやる。そういった意外性、お金をかけて一流人がバカをやる、その一点をきわめて欲しかった。

もっとも、そんなローワンが女王陛下をおちょくるパロディシーンを演じているのは、ある種のセルフパロディともいえるわけで、その勇気は評価したいところ。

アクションシーンはお金をかけているだけあってさすがによくできている。中でもローワン自身が一番気に入っていると語る車椅子のアクションシーンがすごい。街を暴走する車椅子、というシュールな風景は、このシリーズならではのものであろう。

この車椅子は撮影のため、ゴーカートのエンジンを積んで実際に走れるように改造したもの。演じるローワン自身がなんと自分で運転をしているというのだから笑わせる。何も本当に走らせることはないだろう。こうしたバカげた挑戦は、同ジャンルの大先輩バスター・キートンの映画を思わせる。

とはいえ、007のパロディはいまや新鮮味がなく、同じイギリス映画界の大将格とはいえ、それ以外の国の人にとっての求心力はそれほどでもない。要するに、今更な感じがするのである。今、8年ぶりにわざわざ続編を作るのであれば、今だからこそられるネタというのをもっと見つけてきて欲しいと思う。

ローワンのキャラ作りの大幅な変更もあったことだし、前作のファンなら誰もが楽しめるというわけでもない。結局終わってみれば、掴みはオッケー程度に思っていた映画のサブタイトルが一番面白かったという、笑うに笑えないオチとなってしまった。

ジョニー・イングリッシュ [DVD]
前作。ふところから空気銃……。
Mr.ビーン カンヌで大迷惑?! 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD]
これもなかなか。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.