『フライトナイト/恐怖の夜』65点(100点満点中)
Fright Night 2012年1月7日(土)全国順次ロードショー 2011年/アメリカ/カラー/1時間46分/配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
監督:クレイグ・ギレスピー 原案:トム・ホランド 脚本:マーティ・ノクソン 出演:コリン・ファレル アントン・イェルチン クリストファー・ミンツ=プラッセ デヴィッド・テナント

≪フツーが心地よい、脱オタク向けホラー≫

リメイクはいまやすっかり定番の手法だが、そう簡単にリメイクできない要素というものがある。たとえば1985年の映画「フライトナイト」は、ホラーファンの間ではカルト作として知られるが、そのカルトな空気感などはその一例である。

だから、そのリメイク版『フライトナイト/恐怖の夜』が、そうしたカルト感をきっぱりあきらめ、万人向けのあたりさわりないホラー映画として作ったのは正解である。ホラー映画にあたりさわりがないというのもおかしな話だが、その中道さがこの映画のいいところである。

ラスベガス郊外に住む高校生チャーリー(アントン・イェルチン)は学園のアイドル的存在エイミー(イモージェン・プーツ)とつき合っているのが何よりの自慢。しかし、ひょんなことから隣に越してきた男(コリン・ファレル)が、本物の吸血鬼だということに気づく。しかもその男は、エイミーの血液を虎視眈々と狙っているのだった。はたしてチャーリーは、エイミーを守り切ることができるのだろうか。

お隣さんにバンパイアが越してくるシュールな設定はそのままだが、舞台は現代へと変更。それに伴い、途中からチャーリーを助ける仲間となる男の職業も変わっている。

まずこの映画の面白いところは、オリジナル、リメイク版ともに、平凡な高校生がバンパイアに反撃を開始する後半の展開。その、一種痛快な吸血鬼撃退アクションが魅力となっている。

しかしながら、そのようなアクションホラーというのは、古今東西、無数に作られてきている。その中で「フライトナイト」が特別に人気がある理由は、古典的な吸血鬼ものながらいささか能天気な学園ドラマの要素を含んでいるからではないだろうか。

特に、オタク層出身のチャーリーが、学園ヒエラルキーのトップに位置するエイミーをゲットするという展開。ここに男のロマンが隠されているのである。

恋愛というのは頭でするものだから、その女のコがかわいいか否かという視覚的なことよりも、属性によってある種の優越感を感じるのは当然である。たとえば黒髪ロングの美人であるとか、ながほそスタイルのナイスバディ美少女であるといったことも重要だが、それと同じくらいその相手が人妻であったり、誰かの彼氏であるといった属性が大きな興奮材料となることもまた事実である。

例によって股尾運転士並に脱線したので元に戻すが、この映画のチャーリーとエイミーのカップルは、こうしたB級ホラー映画のメイン客層であるオタク層にとっては、いわば憧れのカップルなのである。

高校デビューの元オタクが、吸血鬼に襲われたガールフレンドを守るために闘う。その過程で、オタク時代の友達と最後にどのような運命をたどるか。それこそが、オタク層が本当の意味でデビューをするという本作の隠れテーマである。

映画としては、80年代のレトロな雰囲気も一部残してあり、往年のファンも楽しめる作り。3D映画ではあるものの、肩に力の入ったものではなく、あくまで見世物として利用している程度の軽い仕上がり。

怖さはほどほど、残酷さもほどほど、お色気もほどほど。そのほどほどさが心地よい。正月料理で疲れた胃袋にはぴったりの、七草粥のような映画である。

最近のホラー映画で流行中の、フラグ破りなどの奇手は一切ない。昔ながらの、安心してみられるホラー映画。ドライブインシアターで、大好きな彼女と親交を深める目的で見るための、定番の作品である。また、愛する彼女が自分より魅力的な大人の男に奪われてしまうという、ネトラレ好きにはたまらない魅力もある。

ティーン向けホラー映画としては、笑いもおふざけも控え目だし、結末もかなり早くに読めてしまうが、そんなラストのすんなりさ加減もまたよし。気軽におすすめできる、中道のホラー映画である。

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オリジナル作品。
学級×ヒエラルキー (マーガレットコミックス)
読んで笑うか、痛みを感じるか。


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