『ワイルド7』30点(100点満点中)
2011年12月21日(水)、全国ロードショー!! 2011年/日本/カラー/109分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:羽住英一郎 原作:望月三起也 脚本:深沢正樹 出演:瑛太 椎名桔平 丸山隆平(関ジャニ∞) 阿部力 宇梶剛士

≪説得力に欠ける≫

『ワイルド7』を見ると、日本のアクション映画の限界がよくわかる。

前例がないほど凶悪な銀行強盗事件が発生。銃撃戦の末逃走した犯人グループは、何の躊躇もなく人質らを次々と射殺。追手の警察もなすすべがなく、そのまま取り逃がすかと思われた時、黒いライダースーツに身を包んだ7人の男たちが現れる。「お前ら全員、退治する」そうつぶやくと7人は、凶悪な強盗犯をさらに上回る過激な戦いぶりで、彼らを虐殺する。この7人こそが、超法規的警察組織・通称ワイルド7のメンバーであった。

ありえないオートバイ・アクションと、法の番人たる警察官が「処刑」を行う過激なストーリーの原作コミックは70年代に人気を博した。それを、海猿シリーズを大ヒットさせた羽住英一郎監督が実写化。中高年の観客まで視野に入れた春の期待作だが、結果としては少々残念な一本である。

警察が、手に負えない犯罪者たちを秘密の特殊部隊を使って皆殺しにする。不謹慎な原作漫画は、当時ちょっとした社会問題にもなった。だがその映画版たる本作にはそうした毒も、当然ながらリアリティも、そしてユーモアも皮肉のひとつもない。オヤジ客を呼ぶには、あまりに幼稚な内容というほかない。

たとえ設定がとっぴであっても、2012年ならではの新しい主題を入れるなどといったアイデアがあれば、大人の鑑賞にも耐えるはず。だがそのような新味はなく、ワイルド7を演じる7人のミスキャストぶりも悪目立ちする。

まず、瑛太をはじめ全体的にメンバーの肉体が貧弱なため、頭でっかちにみえてライダースジャケットが全く似合っていない。ならばせめて、巷のスレンダー女子の知恵を拝借し、中綿やパッドをたっぷり入れてごまかしてやればと思うが、この映画の衣装さんはどうもナチュラル志向だった模様。そうした工夫は見られない。

あらゆるジャケットの中でもダブルの革ライダースは、東洋人にとっての鬼門であると私は考えている。だからこの点がどうしても気になる。

そんなわけで、ヒーロー映画で7人が7人ともかっこ悪い。それがこの映画の致命傷である。センスも悪けりゃ、キャラも立たず。ヒーローというよりは、どう見てもザコに見える。彼らに比べたら、試写室の帰りに通った新橋の交番の警官のほうがはるかに強そうである。これではワイルド7というよりマイルドセブンである。

せめて主要なメンバーたちの、日常の激しいトレーニング風景を入れてみるとか、何がしかのすごさを戦う前の段階に挿入してアピールしておかないと、その後の活躍に説得力が生まれない。いきなりオートバイでやってきて犯人を皆殺し。これではただの漫画である。漫画の映画化だからといって、映画が漫画でいいわけではない。

観客は、貧弱なやせっぽちのどうみても雑魚な7人が、屈強な凶悪犯を皆殺しにするのを見て、完全に置いて行かれた気分になる。ヒーローをヒーローとして観客に認識させるには、なにより手順が大事である。見た目がザコセブンなのだから、そこをもっと徹底して考えなくてはならなかった。

この映画のワイルド7ときたら、そうした「説得力構築」がなっていないのに、いざ実戦が始まると無敵状態。雨あられのようにふりかかる弾丸も、メンバー全員を勝手によけていく。7人の中にバリアを張る能力を持つ者がいるのでなければ、この演出は笑いを誘う以外の何物でもない。

売り物のバイクアクションは迫力があるが、ショット単位の出来はいいもののそこで力尽きた印象。それらの組み立てに工夫をして複合的な効果を上げるとか、動きそのものに伏線を張ってお客さんを感心させるといった、中級以上のアクション映画ならやれるべき段階にも届いていない。

キャスティングにあたっては、大型バイクが乗れる免許を持った役者ばかりを集めたというが、バイクに乗れればいいというものではもちろんない。ヒーローとはどういうものか、その説得力を出すにはどうしたらいいか。作り手はそのあたりをよく研究して、次回作に挑んでいただきたい。

ワイルド7 [愛蔵版] 1
原作コミックその1。
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