『映画 怪物くん』5点(100点満点中)
2011年11月26日公開 全国東宝系 (3D&2D同時公開) 2011年/日本/カラー/103分/配給:東宝
原作:藤子不二雄A「怪物くん」(小学館刊) 監督:中村義洋 脚本:西田征史 出演:大野智 松岡昌宏 八嶋智人 川島海荷 上島竜兵 チェ・ホンマン
≪世界に誇るチャレンジ精神≫
「デビルマン」「忍者ハットリくん」「ドカベン」……これまで日本映画界は、数々の人気漫画を実写映画にしてきた。そのラインナップを見るだけでも、この国の映画業界がいかにチャレンジ精神に満ちているか、よくわかるといいうものだ。誰が見ても失敗するのが明らかなのに、果敢に挑戦を続けては討ち死にする。その勇姿はまるで、毎回記録1cmで沈みゆく、鳥人間コンテストのウケ狙い出場者のようでもある。
新大王就任を前にしながら、そのあまりのワガママぶりで国民の反発をくらった怪物くん(大野智)は、再び人間界のヒロシのもとに舞い戻る。ところがついた先はなぜかカレーの国。そこで救世主と間違えられた怪物くん一行は、とらえられた王女を救い出してほしいと頼まれる。
企画が通りやすいし宣伝しやすいし、そこそこ収益も上げやすいということで漫画原作ものは映画化されやすい。ゲテモノ趣味の映画ファンがそれほど多いはずはないから、これは一種のケインズ政策のようなものだ。穴を掘って埋めるだけでもカネは回る。不況時のマクロ経済的にはきっとそれでいいのだろう。
そんなわけで一切の期待をせず見に行ったわけだが、そこで得たものはやはりゼロであった。その意味では、期待を裏切らない仕上がりである。
漫画やアニメ通りの風貌をもつ怪物くんを大野智が演じる意外性は原作のドラマと同じだが、大スクリーンでみると改めて尋常ではない違和感である。その姿はほとんど英国風ちんどん屋とでもいうべきもので、カントリーブーツもショート丈のパンツも個々のアイテムは決して悪いものではないが、組み合わせでここまで品格を壊せるものかと感心させられる。
嵐のファンはこんな大野くんを見たがって1800円を支払うのだろうかと、理解困難な疑問の渦が脳内を駆け巡る。世界広しといえどこんな映画が季節の目玉として成立するのは日本だけだろう。
映画の内容は、スペシャルなカレー食いたさに王女を救いに行った怪物くんが、色々苦労をしてちょっとだけ人間的成長を遂げるという、子供向き映画のひな形通り。手足が伸びるチープなVFXの見せ場もわかりやすく、小学生くらいの子供たちはそれなりに楽しめるかもしれない。
とはいえ、大人の一見さんにとっては、この作品を見る理由は何もない。トンデモ映画探しを趣味とする人に対してさえ、さほどの突き抜けがあるわけでもないからすすめはしない。ただただ不思議な国、ニッポンの現況をよく表しているなと、感心するのみである。