『4デイズ』90点(100点満点中)
2011年9月23日(金)より全国ロードショー! 2010年/アメリカ/97分/ショウゲート
監督:グレゴール・ジョーダン 脚本:ピーター・ウッドウォード 出演:演: サミュエル・L・ジャクソン キャリー=アン・モス マイケル・シーン

≪もはやアメリカ人の未来は真っ暗だと証明した≫

『4デイズ』も震災延期組のひとつで、私がこれを見たのは3月初旬の震災直前だった。そんな時期的なイメージに加えて作品としてのインパクトが甚大で、個人的には延期組の中ではナンバーワン作品と思っている。

米国内3か所に自作の核爆弾を仕掛けたテロリスト(マイケル・シーン)が逮捕された。タイムリミットが迫る中、当局は拷問のプロフェッショナル=通称"H"(サミュエル・L・ジャクソン)を呼び寄せ、密室内で手段を問わぬ尋問をすることにした。同席したFBI捜査官(キャリー=アン・モス)は法を守る立場からこの人権無視のやり方に抗議するが、かといって代案はない。とどまることを知らぬ残虐な"H"のやり方を制御するのが精いっぱいであった。だが、そもそもなぜこれほど有能な犯人が、たやすく逮捕されたのだろうか……。

スケールは大きいが登場人物は主に3人。舞台はアメリカ政府御用達の拷問部屋。スペクタクルもあるにはあるが、基本的には低予算のサスペンスドラマだ。しかしチープさは全く感じさせない。容赦ない残酷性とその描写により、予定調和なハッピーエンド以外もありうる空気を漂わせており、先が読めない怖さを存分に味わえる。

仕掛けられたのが核爆弾であること、その場所は犯人しか知らないこと、広い全米のそれも3か所であること。こうした「攻め手側」の圧倒的優位に比べ、「守り手」の有利は当の犯人を拘束していることだけ。この映画の構図は、テロに対しては守る側が圧倒的に不利な厳しい現実をデフォルメしたものである。

とはいえ、私はこの映画を現実感あふれるサスペンスとして評価しているわけではない。

確かにスリル満点の楽しい映画だが、いかに犯人が元特殊部隊員とはいえ、あれだけの拷問に耐えることなどまず不可能。その意味ではリアリティはもともと無い。むろん、その点は作り手も重々承知してわざとやっているはずなので、批判対象には当たらない。つまり、この作品は現代の寓話なのである。

『4デイズ』を私が高く評価している理由はここ。この映画は、ある種の思考実験、問題提起として完璧な出来栄えである。

そもそもこの低予算映画のテーマは単純だ。こんな究極の事態が起きたらあなたは拷問者を支持するのか、それともFBI捜査官を支持するのか。その問いかけである。

だがこの映画の作り手は、そうした単純な二者択一を提示しつつ、日本公開版ではじめて公開される真のラストシーンで、気づく人だけ気づくショッキングな宣告を下す。そこがいい。

見た人が考える楽しみを奪うわけにはいかないから詳しくは書かないが、ようするにこの映画は、一見二者択一に見えるが、実はあなたたちにもう選択肢などないのだよという事を言っている。

ここでいうあなたたちとは、もちろん現在のアメリカ人のこと。この映画は、彼らに対する絶望的な宣告そのものである。それを知ってか知らずか、結局本作は米国で上映中止になったが、まさにうなずけるというものだ。

ここに気づいた米国人はさぞショックだろう。彼らはもう戻れない、この道を行くしかない。ラストショット直前までは他の道があったように見えたのに、あるいはそう見せられていたのに実は違っていた。なんと人の悪い監督であろう。

対テロ戦争開始以来、あるいは建国以来かもしれないが、米国が歩んでいるのはときにいばらの道などと表現される。そのいばらの道を、誰でも実感できるように表現してくれた映画として、『4デイズ』は記憶に残る作品になるだろう。これもまた、アメリカウォッチャー必見の1本である。

 
テロ後―世界はどう変わったか (岩波新書)
なんて書いたけど、とっくに米国はテロ戦争の後を生きてますね。
素晴らしき日本の拷問2 [DVD]
えろい拷問です。
▼『超映画批評』全文検索
Google
  Web movie.maeda-y.com   


連絡は前田有一(映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.