『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』30点(100点満点中)
2011年4月16日(土)全国東宝系ロードショー 2011年/日本/カラー/109分/配給:東宝
原作:青山剛昌 総監督:山本泰一郎 監督:静野孔文 脚本:古内一成 音楽:大野克夫 声の出演:高山みなみ 山崎和佳奈 小山力也

≪よく上映中止にならなかったものだとヒヤヒヤ≫

東日本大震災の影響で、日本の映画界も混乱した。外資系は軒並み営業を控えて社員たちは自宅待機、その他の会社も通常通りだったところはほとんどないような状況であった。当然、公開作品の中止や延期も相次いだ。とくに地震や人の死、そういったものを連想させる作品がそれにあたる。これはさすがにやむをえまい。『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』も私は一時、大丈夫かな、と思っていたが、無事公開されて子供たちをほっとさせた。

都知事を狙った列車爆破テロ事件に居合わせた江戸川コナン(声:高山みなみ)は、なんとか都知事の命だけは救ったものの、犯人を捕らえることはできなかった。やがてコナンは、都知事が国土交通大臣時代に手がけたダム建設をめぐる怨恨の線にたどり着くのだが……。

この映画のクライマックスを見れば私の心配が何だったかわかると思うが、そのシーンに代表されるように本作は映画版らしくアクション重視。季節外れの雪山を舞台に、スノボーに乗り換えたコナン探偵が激しく動き回る。

むろん、おなじみのフルメンバーもその雪山捜査──というか旅行についてきて、おなじみのコントを繰り広げる。蘭に正体がバレちゃいそうになるハラハラ展開もお約束。安全安心の定番パックで提供される。

推理物としての面白さやロジカルな謎解きといったものはほとんどない。休み中の子供たちがワイワイ騒ぐための、マンガチックなスペクタクルと割り切ってみるほかない。もちろん、子供のみならずそういうのが好きな大人にも向く。いるかどうかは知らないが。

なおゲスト声優としては戦場カメラマンの渡部陽一と、「情報ライブ ミヤネ屋」の宮根誠司アナウンサーが登場。どこに登場しているか、みんなで頑張って探してみよう! 我ながら、書いている自分の白々しさが愛おしい。

そんなわけで、映画版としてはちょいとイマイチな印象だが、熱心なファンはどう評価するか。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.