『シュレック フォーエバー』30点(100点満点中)
Shrek Forever After 2010年12月18日(土)より新宿ピカデリー他 全国ロードショー 2010年/アメリカ/カラー/93分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
監督:マイク・ミッチェル 製作総指揮:ジェフリー・カッツエンバーグ 声の出演:マイク・マイヤーズ/濱田雅功 キャメロン・ディアス/藤原紀香 エディー・マーフィ/山寺宏一 アントニオ・バンデラス/竹中直人

≪シリーズ継続のための工夫はみられるものの、完全に賞味期限切れ≫

3Dの普及でひとつ見逃せないのは、シリーズものの延命効果であろう。微妙に人気下降の局面でも、初の3D版ですよーと言えばあと1本くらいはどうにか作れる。そんな時代である。

『シュレック フォーエバー』は、アメリカでは記録的な大ヒットシリーズの完結編という位置づけ。作品のパワーは完全に断末魔のそれで、3Dのゲタはき効果がなければどうなっていただろうと思うほどの凋落ぶりを感じさせる。

妻フィオナ(声:キャメロン・ディアス)と3人の子供たちに囲まれ、何の不足もないように見えるシュレック(声:マイク・マイヤーズ)の日常。しかし彼は、日に日に不満をため込んでいた。怪物らしく気ままに暮らしていた独身時代が、最近恋しくて仕方がない。そんなとき、魔法使いのランプルスティルスキンが一日だけその望みをかなえてやろうと近づいてくる。だがシュレックが思わず契約書にサインした途端、世界は一変。仲間たちと誰一人出会っていない、暗黒のパラレルワールドへと飛ばされてしまう。

さて、シュレックが飛ばされた世界には、おなじみのドンキーや猫たちがいるものの、なぜか彼のことを知りもしない様子。冷たくあしらわれるシュレックは、ようやく自分が間違ったことをしでかしたことに気付く。最悪なのはフィオナさえ、自分を何とも思っていないこと。失って初めてわかる、日常の幸せ、というやつである。

男というものは結婚して子供ができると、苦労ばかり多くて変化の少ない生活に嫌気がさしてくる。これは多かれ少なかれ、誰もが経験することだろう。そりゃ子供たちはかわいいに違いないが、男とは永遠に狩人(シュレックの場合は怪物?)。自分が手にしているかけがえのない幸せの価値を見失い、火遊びをしたくなるのも本能の一つというものだ。

こういう問題提起、物語の発端は悪くないのだが、結局とっかかりにすぎず、表層的なアクションの派手さだけで終わってしまったのは残念だ。このテーマをもっと掘り下げて、このシリーズらしいアンチディズニーなオチをくっつければ、それなりに4作目を作る理由にもなったのだが。現実はどうにも力不足が否めず、あまりにひねりのなさに失笑がもれた。

そんなことはないのだろうが、なんだかスタッフも無理してシリーズを続けているようで同情を禁じ得ない。観客に同情されてどうするんだという話だが。

もともとこのシリーズは、本当の姿は怪物でした、のアンチDな衝撃がすべてのようなもの。極論を言えばそこで作品の使命、やるべきことは終わっていたようなものだ。ようするに、2以降はオマケ、会社側のボーナスのようなもの。だがそれでは、結局やっていることはディズニーのビジネスモデルの後追いに見えてしまう。続編はDVD向けに小さく続けるアチラのほうがよほど余裕があるというか、良心的にすら思えてくる。雑巾を絞りきるように、最後の一滴までシリーズを続ける姿は見ていて痛々しい。

とはいえ、同じ会社で同じような製作費で作られた「ヒックとドラゴン」のような本当の傑作は、日本ではまったく売れない。一方、知名度の高い本作は、安直続編であってもそこそこの商いを記録するのだろう。

どうせ見るならヒックを推したいが、もう上映はしていない。タイミングがすべての映画選びも、じつに難しいものである。



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