『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』65点(100点満点中)
Harry Potter and the Deathly Hallows: Part I 2010年11月19日(金)、丸の内ピカデリー他全国ロードショー 2010年/イギリス、アメリカ/カラー/2時間26分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:デビッド・イェーツ 脚本:スティーヴ・クローヴス 出演:ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン

≪最初からクライマックス全力疾走≫

私はこのハリポタ最新作をちょっと前に試写会で見たが、気付いたらすでに公開していた。どうもせっかくのシリーズ完結編(の前編)だというのに、あまり世間が騒いでいる様子がない。それでも年間ランキング上位に顔を出す程度の興収はたたき出すのだろうが、どことなく影の薄い超大作である。

頼みの綱であるダンブルドア校長が死に、ホグワーツ魔法学校も安全地帯ではなくなった。それどころかヴォルデモートとその息のかかった者たちにより、魔法界すべてが陥落寸前であった。17歳になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)は、親友ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)とともにヴォルデモート唯一の弱点である分霊箱探しの旅に出る。だが3人の友情の絆にも、最大のピンチが迫っていた。

大魔王と戦う割に緊張感がないとか、スロースターターすぎるなどと揶揄される映画版だが、前作のラストで大きく話が動いたおかげで、この最終話はのっけからクライマックス状態。ようやく最後の戦いを実感できるムードとなった。前作までのノーテンキ学園ラブコメは姿を消し、悲壮なる戦いに挑む3人の活躍に集中できる。

本作は当初3D上映をめざし、残業をもろともしない技術スタッフたちがたぶん徹夜で頑張っていたが、直前に断念。望むクオリティを実現できそうになかったとか、時間と予算が足りなかったとか、様々な理由が言われているが、結局通常の2Dで上映されることになった。こんな事でヴォルデモートとの戦いに勝てるのか、いささか心配である。

3Dを目指した名残は、いかにも飛び出してますといいたげなオープニングなどにみる事ができる。しかし本作は全体的にダークな雰囲気になっているから、わざわざサングラスのごとき眼鏡をかけて見る3Dでなくとも、じつは良かったのかもしれない。これを好意的ポジティブ思考という。

エマ・ワトソン演じるハーマイオニーは、相変わらずボスキャラ級以外が相手であれば無敵に近い大活躍。四次元ポケット片手にルーラやベホイミを唱え、パーティーの要としての責務を果たす。今回はシリーズ第一作での衝撃的な登場から9年間、世界中の非実在青少年好きの男どもが待ちに待った18禁な姿および演技もついに見せてくれる。映画における映像技術は、エマ・ワトソンのあんな姿をさえ堂々と見せられるまでに進歩した。正しい進化といえるかは、はなはだ疑問であるが。

3人は当初協力し合って旅を続けるが、サウロンの指輪、いや分霊箱の作用により思春期ホルモンが暴走。あっという間に仲たがいし始める。危なっかしい三角関係をみて、こんなんで大丈夫かと観客をハラハラさせる。

全編3人のキャンプ大会かよとか、リアリティーショーかよなどと突っ込みたくなる向きもいようが、決してテンポは悪くない。次の最終作にむけ、期待をおおいにあおりまくってくれる良いつなぎである。146分間、飽きずにこの世界観を堪能することができるはずだ。

すでに撮影完了している最終作を、早く見たい限りである。



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