『エクスペンダブルズ』30点(100点満点中)
The Expendables 2010年10月16日(土)全国ロードショー! 2010年/アメリカ/カラー/103分/配給:松竹
監督、脚本、主演:シルベスター・スタローン 出演:ジェイソン・ステイサム ジェット・リー ドルフ・ラングレン ランディ・クートゥア テリー・クルーズ ミッキー・ローク ブルース・ウィリス アーノルド・シュワルツェネッガー

≪モーレツ期待外れ大賞≫

初代タイガーマスク、藤波辰爾、藤原喜明、長州力、天龍源一郎といった往年のスーパースターに鈴木みのるら若き実力者をぶつける。そんな夢のような興業を定期的に行うリアルジャパンプロレスという団体がある。縁あって毎回見に行っているが、プロレス黄金時代を味わった世代の一人としては、リングから特別なオーラが発せられているのを毎度感じている。

世の中がまだシンプルだった時代には、だれもが憧れるスターというものが存在しえた。だが、あらゆる娯楽がパーソナルになり、人々の好みが細分化した贅沢な現代には、「国民的美少女」も「時代を代表する映画スター」も小粒になる一方だ。

そんな時の流れに抗った男がアメリカ映画界にいた。その男、シルヴェスター・スタローンは盟友アーノルド・シュワルツェネッガーとの朝食会の中で、CG補正に頼る現代の映画スターに対して愚痴、いや苦言を呈し、「俺たちは筋肉を見せられる本物のアクションスター最後の生き残りだ」と語り合ったという。

そんな彼が、80年代のアクション映画全盛期の復興を有言実行した作品が「エクスペンダブルズ」。スタローン長年の夢を具現化した、おそらくまだまだ続くプロジェクトの第一弾には、彼の本気が伝わる豪華キャストが顔をそろえた。

百戦錬磨のバーニー(シルヴェスター・スタローン)率いる傭兵軍団エクスペンダブルスは、謎めいた依頼人(ブルース・ウィリス)から南米の島国を牛耳る独裁者の抹殺を依頼される。あまりに困難で危険な仕事ということで、まずは視察に向かったバーニーと仲間のリー(ジェイソン・ステイサム)は、独裁者の娘ながら民衆の苦労を知る娘サンドラ(ジゼル・イティエ)と出会い、心惹かれる。

毎回後楽園ホールを満員にし、満足いくファイトを見せてくれるリアルジャパンプロレスとは違い、本作は本年度期待外れ大賞をあげたくなるほどのていたらく。エクスペンダブルスとは消耗品、捨石という意味だが、この映画こそポイ捨てしたくなるほどのダメっぷりである。

格闘術に長けたジェット・リーとドルフ・ラングレンを戦わせたり、シュワちゃん&ブルース・ウィリス&スタローンの、共同経営レストラン開店記者会見以外ではなかなか見られない3ショットを用意するなど、それなりにいい場面も確かにある。

しかし、これだけのメンバーをそろえながらこの頼りないアクションシーンの数々はどうだろう。

ミッキー・ローク、ランディ・クートゥア、スティーヴ・オースティン……、錚々たる主演級アクション俳優をそろえながら、胸を熱くする展開に欠ける。

だいたい「CG補正に頼る最近の若者はけしからん」といいながら、ベテラン組は軍服やシャツを脱ごうともしない。大手術を行った上に知事職で忙しいシュワルツェネッガーはもう無理としても、スタローンは相当な肉体づくりをしてきたのが服の上からでもわかるし、もっと積極的に前に出てもいいと思う。

また、ミッキー・ロークやランディ・クートゥア、ジェイソン・ステイサムあたりはまだまだ(肉体的には)若く、いくらでも薄着、または裸になれるだろう。脱がずに鉄砲うってるだけならだれでもできる。彼らにはキャンドル・ジュン氏を見習って、もっと自慢の肉体を見せつけてほしい。

とはいえ、若手が本当に凄い体を見せつけてしまうと、ベテラン組の立場がないという事情もよくわかる。

いずれにせよ、オールスターそれぞれのキャラクターを立てるには、監督脚本家の力が不足していたという印象。アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラら有名な格闘家やプロレスラーも出ているのだが、いつの間にやら死んでいたという、あまりにもったいない捨石っぷりである。

アクションシーンの組み立ても、細かいショットに割りまくり。CGやワイヤーなんて邪道だ、というくせに小細工しすぎ。80年代の泥臭いマッチョムービーを目指すというわりには中途半端だ。

今後、このシリーズを続けるのならば、スタローンがハリウッド一の肉体と評価するドゥエイン・ジョンソンあたりの現役の本物スターを引っ張ってきて、逆に体作りのできない奴は出さないといった思い切りも必要になろう。今回も、ただ名前だけじゃねーかと腹立たしくなるような出演者が多数おり、満足度を大きくスポイルしていた。

無駄に残酷な殺害シーンもいかがなものかと思うし、すかっと楽しめる往年のアクション映画とはあらゆる意味でほど遠い。スタローンが目指したものが、十分実現したとは言えない状況だ。

コンセプトには全面的に賛同するが、スタローン以外の出演者に彼ほどの熱意が感じられず、役作りも体作りもぬるすぎるという点が、最大の問題といえるだろう。

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