『ナイト&デイ』97点(100点満点中)
Knight and Day 2010年10月9日(土)、TOHOシネマズ 日劇他 全国ロードショー 2010年/アメリカ/カラー/109分/配給: 20世紀フォックス映画
監督:ジェームズ・マンゴールド 脚本:スコット・フランク、ジェームズ・マンゴールド 出演:トム・クルーズ キャメロン・ディアス マーク・ブルカス マギー・グレイス

≪おバカな内容だが、そう簡単には作れない高い完成度≫

『ナイト&デイ』は、今年のアクション映画の中では突出したできばえで、このジャンルでこの作品を上回るものは、残り3か月もう出てこないだろう。

ボストンへの帰路、ジューン(キャメロン・ディアス)は空港でぶつかったハンサムな男性(トム・クルーズ)に心奪われる。機内でも偶然近くに座った彼と、なんとなくいいムードになった彼女は化粧室で心を落ち着かせる。ところがトイレから戻った時、機内はとんでもないことになっていた。

上記あらすじはほんのさわりだが、このシークエンスの面白さは簡単には語りつくせぬほどで、ぜひとも映画館で堪能いただきたい。キャメロン・ディアスの名コメディエンヌぶり、トム・クルーズの切れ味鋭い動き、それらがアメリカ映画らしいハイテンポな編集で描かれ、まれにみる爆笑&迫力の見せ場となっている。やってる事はとんでもなくおバカだが、それを本気のアクションと最新かつ超一流の演出で見せる。この映画のコンセプトがここに凝縮されている。

トム・クルーズは濡れ衣を着せられたスパイの役で、一般人のキャメロン・ディアスを巻き込んで逃げ回る。どう見ても命の危機の連続で、こんなのごめんだわと退場を願うヒロインに、ニコニコ笑顔で強引にストーカーする展開が楽しい。「僕と一緒にいないと命の危険はさらにアップするんだよ」と、無理やり同行をおしつける姿は、迷惑千万としかいいようがない。かように粘着気質な能天気イケメンとは、なかなか新鮮なキャラクターである。ちょっぴり空気の読めない大スター、トム・クルーズにぴったりな、近年屈指のはまり役といえるだろう。

やはり大スター同士の競演作とはこうでなくてはならない。互いの得意技を全力でぶつけあい、センスのいい監督がそれをまとめあげる。どちらにも花を持たせ、観客も大満足。これ以上いったい何を求めればいいのかというほどの大サービス作品である。

跳ね回る車、屋根をぽんぽん飛び回るトム・クルーズ、バイクの二人乗り……どのアクションシーンも楽しさ、迫力ともに100点満点。本作はコメディー作品だが、現代のアクション映画としてみても手抜きなしの最高峰に位置する。トム・クルーズが「ソルト」主演をアンジェリーナ・ジョリーに譲り、早々に見切りをつけたのもよくわかる、見事な完成度である。

デートのお供にピッタリな、ハリウッドらしいハリウッド映画。この秋ダントツの傑作として、楽しい映画を見たい人におすすめしたい。



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