『FLOWERS フラワーズ』30点(100点満点中)
2010年6月12日公開 2010年/日本/カラー/1時間50分/配給:東宝
監督:小泉徳宏 製作プロダクション:ROBOT 出演:蒼井優 鈴木京香 竹内結子 田中麗奈 仲間由紀恵 広末涼子
≪説明的台詞の雨あられ、各女優はそれぞれの女優にしか見えず≫
資生堂のCMでおなじみの6人の女優を競演させる企画もの映画。とはいえメガホンをとるのが好編「ガチ☆ボーイ」の小泉徳宏監督ということで、多少の期待とともに試写室に出かけた。
物語は3世代にわたる女性6人の悩みや成長を描くもの。まずは昭和11年、蒼井優は昔ながらの慣習で親に結婚相手を決められた女性の役。だが女学校卒でリベラルな性格の彼女は、この結婚をなかなか承服できない。
その約20年後、昭和30年代は、彼女の娘を演じる竹内結子と田中麗奈姉妹の物語。恋愛結婚した竹内と、意外な人物にプロポーズされ悩む田中の対比となる。
昭和52年では、もう一人の姉妹で末女役を仲間由紀恵が演じる。病弱なのに二人目の妊娠が判明し、夫婦とも決断を迫られる。
そして現在。ここは孫たちの世代だ。平凡ながら幸せな家庭を築く広末涼子と、ピアニストの夢を追いかけた結果、完全に行き遅れて夢も挫折した鈴木京香の対照的な姉妹のドラマとなる。
豪華競演というが、そんなわけで6人全員が集まる機会はない。スケジュールを押さえるだけでも大変な人気女優ばかりであるから、この構成は必然といえるだろう。仲間由紀恵などは、ほとんど一人きりの出演である。
こうした舞台裏事情がバレバレなので、これだけのメンバーがいながら豪華キャストというイメージはなく、お手軽感ばかりが漂う。豪華共演という要素に期待してると、まるで物足りないだろう。もしこの6人がでずっぱりで画面の中にいるのであれば、相当ゴージャスな映画になっただろうに、残念である。
それでも例えば竹内と田中の姉妹役というのは、見た目の違和感はあれどどちらも個性と実力を兼ね備えた女優であり、その絡みは見ごたえがある。また、個人的には仲間由紀恵の、黒ストレート以外の髪型を見られたのも貴重。なんだか別人のようだ。
それぞれの時代の女の悩みを描いているが、結局のところ女の幸せは子供ですかといいたくなるような単純さ。深みもなければ深刻さも感じられない。次の展開が100%予測できる退屈なドラマである。
試写室でお隣に座った見知らぬ女性(泣いてる横顔から判別した結果、たぶんアラフォー)はクライマックスのオリビア・ニュートン=ジョンを聞きながらしくしく泣いていたが、これで泣ける素直な感性が羨ましい。なんだか自分の心が汚れているようで、複雑な気分である。
映像面では、それぞれの時代をその時代の代表的映画作品のコピー風に演出しているあたりが笑える。小津風あり、植木等の喜劇風あり。よくこんなに忠実に「らしさ」を再現したと感心しきりだ。今の映像技術ならば、邦画でもこのくらいはやってしまう。