『セックス・アンド・ザ・シティ2』65点(100点満点中)
SEX AND THE CITY 2 2010年6月4日(金)、丸の内ピカデリーほか 全国ロードショー! 日本語吹替版同時公開 2010年/アメリカ/カラー/2時間27分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:マイケル・パトリック・キング 出演:サラ・ジェシカ・パーカー キム・キャトラル クリスティン・デイビス シンシア・ニクソン

≪余裕ある大人向けコメディ≫

セックス・アンド・ザ・シティに夢中になる女子(参考年齢平均38歳)を見ていると、たしかに少々イタい。だが、セックス・アンド・ザ・シティの女性観を必死に叩く、余裕のない人たちの姿はもっとみっともない。なにごとも、ゆったりした心構えで楽しみたい。そんな大人のたしなみを理解したカップルなどにこの作品は、なかなか楽しい時間を与えてくれる。

長年の紆余曲折を経て結ばれたミスター・ビッグ(クリス・ノース)とキャリー・ブラッドショー(サラ・ジェシカ・パーカー)。しかし、毎夜のように着飾って外出したいキャリーに対し、ビッグは自宅でくつろぎたい。一方子育てや仕事に奮闘する親友のミランダ(シンシア・ニクソン)やシャーロット(クリスティン・デイヴィス)も、それぞれ人生にストレスを感じていた。そんな彼女らにサマンサ(キム・キャトラル)から、豪華アブダビ旅行に無料招待されたから一緒に行こうとの誘いが入る。

この話題作に私はどうも嫌われたようで、試写会にいけば超満員。公開初日に同行してくれそうな知り合いの熟女ガールズにもことごとく振られ、ようやく都合をつけて後日見に行ってみたら上映40分前にすでにチケットは売り切れ。仕方が無いので次の回まで真昼間からパブでエールを飲んで時間をつぶし、ようやく見られたという始末である。

結論としては、映画版前作ほどではないにしろ、それなりに笑える愉快なアメリカ映画といったところ。

だいたいこのご時勢に、4人のお姉さんがアラブで想像を絶する贅沢三昧をするだけという、冗談としか思えぬ内容の映画が公開されることが驚愕である。現地ロケは実現しなかったようだが、そのゴージャスさ自体がそのままギャグになるという高度な、そして予算のかかるバカ映画として完成した。

ファーストクラスは快適そうな個室で、到着すると純白のマイバッハ(ダイムラーによる、ベンツSクラスを上回るセミオーダーメイドの高級車)のリムジンが一人一台送迎にやってくる。この超高級車が4台連なって砂漠を爆走するシーンは、どんなアクション映画のカーチェイスよりも、車好きの心を躍らせるに違いない。本作にはメルセデスが協力しているので、いろいろなベンツを見たい人は必見である。

その後、宿泊施設に到着すると、さらなるド贅沢が待っている。それがタダというのだから、疑似体験中の観客の快感度もマックス。この常軌を逸した歓待ぶりをみれば、女性はうっとり、男性は笑うほか無いだろう。

あらゆる女性たちの心をつかむため、設定もバラエティ豊か。たとえばシャーロットは子育てに疲れ、リフレッシュを期待してこの旅にやってくる。小さい子供を育てている女性にとっては、あるあるの連続だ。こんな事ができたらどんなに素敵だろうという感じで、2時間半は最高の癒し。ほとんどビデオドラッグのようにこの映画は作用するはずだ。

彼女が嫉妬心を感じることになる新しい子守の女性がまた笑える。若くて美人なのはもちろん、自宅にやってくるときはなぜかノーブラ。愛する旦那様と二人で残してくる事に、シャーロットは気が気でない。その二人が子供を入浴させるスローモーションのシーンは、あきらかに悪乗りな確信的やりすぎ演出に大爆笑である。

このほか、サマンサの下ネタも相変わらず絶好調。チンコネタ、加齢ネタなど期待通りの切れ味といえる。大物ゲストの一人で全米トップアイドル、マイリー・サイラスと絡む場面の切なさはたまらない。こんなシーンを演じなくてはならぬ女優さんには思わず同情したくなる。

主人公キャリーの、どう見ても傍若無人なビッグへの態度や、それを受けてのビッグのありえないラストの行動など、女性以外は口ポカーン状態になること確実な無鉄砲な展開もほほえましい。やはりこれくらい飛ばしてくれないとSATCを見た甲斐がない。

SATC史上最高の贅沢大会ということで、服好きにとっては最高の目の保養。個人的にはオープニング、現代のキャリーが身につける白いドレスのかわいらしいラインには思わず目を奪われた。内容は二の次、こういうものを見ているだけで十分と思えてしまう、私のようなタイプにとっては、結構満足度の高い新作であった。この調子で60歳、70歳になっても続けていただきたい。DVD化した際のジャンルはホラーの棚で。



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