『タイタンの戦い』75点(100点満点中)
CLASH OF THE TITANS 2010年4月23日(金)、丸の内ピカデリー他 全国ロードショー! 3D版 同時上映/日本語吹替版 同時上映 2010年/アメリカ/カラー/106分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ルイ・レテリエ 出演:サム・ワーシントン リーアム・ニーソン レイフ・ファインズ

≪これぞ少年が胸躍らせる冒険活劇≫

案外保守的なハリウッドのビジネスマンたちは、最近ギリシャ神話に目をつけ次々と映画化している。題材どころかタイトルまでほとんど同じ企画を両方通してしまい、あわてて片方を改題するなどあわてんぼうな一面をさらけだしたりもしているが、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」に続く本作『タイタンの戦い』も、そんなギリシャ神話ブームに乗ったひとつだ。

神話の時代。神々の横暴により人間界にはさまざまな災厄がふりかかっていた。業を煮やしたアルゴスの王は、ついに最高神ゼウス(リーアム・ニーソン)らオリュンポスに戦いを挑む。だが冥界神ハデス(レイフ・ファインズ)の返り討ちにあい、愛する王女(アレクサ・ダヴァロス)を生贄に差し出すはめに。神と人の間に生まれたペルセウス(サム・ワーシントン)はそれを見て、人間として戦うため立ち上がる。

ペルセウスと人間側のわずかな残存勢力による精鋭パーティーが、ハデスとその怪物クラーケンに立ち向かうまでを描くアドベンチャー。81年の同名映画のリメイクである。

かわいい女の子を手篭めにしまくり、愛を食らって生きるなどとのたまうエロ狂いの神どもに、圧倒的に非力な人間が天誅(下克上?)を下すストーリー。

ただしこれではさすがに不謹慎。そこで主人公を父親神とタイミングよく和解させることで、悪役を神全体からハデス一人に首尾よくすり替える事に成功した。特別な剣をその象徴として登場させ、ついでに見せ場も作ってしまうなど、じつにうまい脚本である。宗教面を気にせず、誰もが安心して楽しめる。アメリカでもおかげで大ヒットした。

81年のオリジナル版は、本作のようにCGではなく古典的なストップモーションアニメと役者の合成で、この上なくワクワクする特撮映像を作り出した。この技術の代名詞たるレイ・ハリーハウゼンの名を知らずとも、メドゥーサの光る目や大さそりのリアルな動きに感動した人は少なくあるまい。リメイク版にも、クリーチャーのデザインやところどころのショットにその名残を残してある。無理やり3D版を用意したあたりも、アドベンチャー映画の見世物的な一面を極めたオリジナルに、少しでも近づこうとの気持ちの表れだ。

残念ながら立体版はわざわざ見る必要のないレベルの仕上がりだが、オリジナルで感じた「熱さ」はよく再現されていた。

3D版は個性的な声色の日本の声優たちが吹き替え版を頑張った事もあるが、なにしろキャラクターが立っている。見た目も性格もはっきりと区別され、誰でも見分けがつくようになっている。こういう親切設計は洋画が苦手な人にはありがたい。

神の子ながら善良な人間の家族に育てられ、その力を100%人類のために使うペルセウス。現実主義者でたたき上げ軍人のリーダー。そして新兵ながら勇気ある若者や、彼を父親のように見守るベテラン兵、一筋縄ではいかない狩人兄弟、そして美人ストーカー。みな人間味があるやつらばかりだ。途中から人間ではないような奴も混じってくるが、これまた美味しい役どころである。

また、彼ら古代人ときたらえらく勇気のある連中で、10m以上はあるかという大さそりの集団に襲われてもまるでひるまない。剣だの槍だのといった原始的な武器とチームワークで堂々と戦い抜くのだ。たとえ仲間が倒れても一歩も引かない。その、悲壮にして勇猛果敢な戦いの中で、最初はいがみあっていた主人公ペルセウスと人間軍の関係も友情に変わる。これで盛りあがらないはずがない。

新「タイタンの戦い」は、旧版とはまるで違った技術により作られた最新作だが、少年やもと少年のおじさんたちの心を奮い立たせてくれる良作だ。きっと男の子には、勇気と力と知恵の大切さを教えてくれるだろう。

ギリシャ神話映画、なかなか好調である。

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今でもみたくなる不思議。
「妖精・天使」眠れないほど面白い事典―ギリシャ・ローマ神話から、聖書、北欧神話まで (知的生きかた文庫)
これは面白そう。安いしよみたい。


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