『隣の家の少女』70点(100点満点中)
THE GIRL NEXT DOOR 2010年3月13日(土)〜4月9日(金)シアターN渋谷にてレイトロードショー 07年アメリカ/91分/配給:キングレコード=iae
監督: グレゴリー・M・ウィルソン 原作:ジャック・ケッチャム 出演:ブライス・オーファース ダニエル・マンチ ブランチ・ベイカー
心を傷つけるおそれのある犯罪映画
少女を監禁して筆舌に尽くせぬ虐待をした事件といえば、日本人なら誰でもあの悲劇を思い出すことだろう。だが、世界に冠たる犯罪大国アメリカにも当然のこと、類似の事件がないはずはなく、シルヴィア・ライケンス事件という65年におきた痛ましいケースが有名である。かつてエレン・ペイジ主演で映画化もされているが、『隣の家の少女』はこの実在の事件を大きくアレンジした犯罪ドラマだ。
58年のアメリカ。自然豊かな郊外で暮らす12歳の少年デヴィッド(ダニエル・マンチ)の家の隣に、年上の少女メグ(ブライス・オーファース)とその美しい妹が越してくる。二人はひどい事故で両親をなくし、妹は脚に障害を負ってしまっていた。デヴィッドは姉のメグに惹かれ急速に仲良くなるが、隣家の主、ルース夫人(ブランチ・ベイカー)はなぜか姉妹に厳しくあたるのだった。
ショッキングな描写が多数あるということで話題になっているが、現実の事件とはいろいろな部分で異なっている。犯人の女が虐待にいたった動機がまったく異なるし、姉妹が越してくる理由、妹の障害の理由なども違う。この変更の理由が、今の時代に映画化する必然性としてリンクしていればなお良かったと思うが、あまりそうした印象は受けない。
この手の映画では虐待の様子を残酷に描くことが観客の心を揺るがすわけで、本作の主たる狙いもそこにあるのだが、肝心のヒロインへの演技指導が足りずやや物足りない。彼女の叫びからは、身体や心の痛みが伝わってこない。死んだほうがマシ、と主人公が回想するほどの「苦しみ」を表現できているとは言いがたい。
ただ、予想外の展開を見せる虐待への道のりは大変興味深く見ることが出来る。ごく普通の子供たちが、一人の狂った中年女の残酷ゲームにいつの間にか巻き込まれ、いともたやすく理性を失い虐待に参加する流れ。そこをリアルに見せることには成功しており、じっさい見ていてぞっとする。
日本の監禁事件においても、犯行グループによってのべ3桁もの人間が監禁現場を見ていたなどと一部でささやかれているが、ありえないようなそんな話にも、これを見た後では現実味を感じてしまう。
それにしてもこの映画最大のショックは、演じる子役たちが、実際に吹き替えなしで虐待する側、される側を行っている点。
あんなに小さな女の子が、大勢見ている前で下着を下ろされ、尻をたたかれる。まだ子供のような女性が全裸にひんむかれ、恐ろしい行為を行われる。そうした出来事を、実際に年端もいかない子役たちがやっているのを見るのは、ショックであると同時に心配もしてしまう。いくらプロとはいえ、この撮影が彼らの精神形成に与えた影響は甚大であるはずだ。
この点だけでも、問題作と称するにふさわしい『隣の家の少女』。なんにせよ、キツい一本である。