『完全なる飼育 メイド、for you』55点(100点満点中)
2010年1月30日(土)シネマサンシャイン池袋ほかにて公開!! 2009年/日本/カラー/ビスタサイズ/100分配給:ゴー・シネマ
監督:深作健太 原作:松田美智子「女子高校生誘拐飼育事件」(幻冬舎アウトロー文庫) 脚本:厨子健介 出演:亜矢乃 前田健 久野雅弘 黒川芽以 竹中直人 西村雅彦

飛び出す濡れ場は見ごたえあり

『完全なる飼育』は日本映画界の至宝というべき純愛シリーズだが、ここしばらくの不況下で新作が途切れた状態であった。

だが、名作「バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜」(03年)の深作健太監督がついにやってくれた。「アバター」に代表される立体映画ブームの勃発により、その最新作『完全なる飼育 メイド、for you』は、世界初の3Dおっぱいが堪能できる超絶体験映画として登場したのだ。

秋葉原のメイドカフェで働く少女(亜矢乃)は、仕事で嫌な思いをした日、出待ちしていたファンの椛島(柳浩太郎)を思わずじゃけんにしてしまう。そのまま二人はもみあいになり、打ち所悪く失神した彼女を、椛島は自分が働く近所のネットカフェの個室に連れ帰ってしまう。

全地球初の斬新な試みについては激映画批評に詳しく書いたとおりだが、じつのところ3D濡れ場じたいはそう珍しいものではない。そもそも立体映画の歴史は古いのだ。ただ昨今はやっているデジタル3Dにおいて──と限定すれば、やはり果敢な挑戦であることに違いはない。クリアな映像で飛び出す裸をみられるのは、普段映画館にいかない人々の重い腰をあげるに十分な魅力である。

その意味で深作健太監督は、日本映画の未来を左右するといってもいい立派な仕事をしたことになる。

悲しいかな低予算のため立体場面は10分間しかないが、そこに登場する亜矢乃の全裸姿は、共演者がうらやましくなるほど均整が取れている。大きさ、美しさともに近年まれにみる美バストの持ち主といえる。

彼女らは、同じく濡れ場づくり初体験の監督を交えて3人でどう撮るかの構想を語り合ったそうだが、その成果もちゃんと出ている。

具体的には、ヒロインが男を「部屋」につれこんでからの愛あるセックス時の会話。これがえらくリアルである。「ゴールデンスランバー」の首相暗殺シーンの1000倍ほどはリアリティがある。

しかしながら終盤の逃亡劇においては、それとは違ったこの監督独自のリアリティ構築術の妙を味わうことができる。

たとえば階下にいる警察官たちは、部屋で銃声がしようが登場人物たちが芝居を終えるまでは、決して昇ってくることはない。

また主人公カップルが屋上に逃げた後、そこに通ずるドアを追っ手がガンガン叩いて入ってこようとする場面があるが、ここで二人が愛の会話をはじめると、後ろの連中はぴたりと動きを止める。二人の会話が全部終わるまで、律儀に待っていてくれるのである。バトロワでも見られた、これぞこの監督らしい粋な演出。深作映画の追っ手はみな心優しいのだ。

それにしても、男と女の関係は一筋縄ではいかず、本作のようにレイプから始まる恋のようなものも、ないとはいえない。弱い人間同士、ひかれあう物語にはそれなりに説得力がある。最初に観客が感じた「うわ、キモい」感が、同じラストシーンの風景では感じなくなっている事の意味を、ぜひ感じ取ってほしいと思う。

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月刊シリーズなのに、ヌードが見られるそうです。これはすごい。
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これも面白かった。監督はこういう路線がいいと思います。


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