『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』60点(100点満点中)
BLUE GOLD:WORLD WATER WARS 2010年1月16日よりUPLINKにてロードショー 2008年/アメリカ/カラー/80分/ビデオ/1:1.66/ステレオ 配給:アップリンク
監督:サム・ボッゾ 原作:モード・バーロウ / トニー・クラーク ナレーション:マルコム・マクダウェル 出演:モード・バーロウ トニー・クラーク ヴァンダナ・シヴァ ミハル・クラフチーク ウェノナ・ホータ

水問題を、おどろおどろしい編集で危機感をあおりまくる

石油をめぐり、世界の国々が戦争も辞さぬ獲得競争をしていることは常識だが、そうした時代が永遠に続くことはない。エネルギー源としてのみ見るならば、石油の代替になるものはすでにいくつもあり、あとはコスト次第というところまで来ている。

一方、どう考えても今後は足りなくなる重要な物質として、投資家や政治家に注目されているのが「水」である。石油がなくとも人は生きていけるが、水がなければ無理。考えてみれば良質な飲料水は、すでにガソリンよりも高い値段で売られている。「007」シリーズの最新作がこの問題を扱ったことでもわかるとおり、いまや水資源をめぐる話題はきわめて重要かつホット。石油よりも、水のほうがはるかに大事なのである。

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』は、そんな水問題を扱うドキュメンタリー。世界中でおきている水の奪い合い、水ビジネスに群がる人々の実態を、危機感あおりまくりの恐怖演出で見せる。

だいたい日本人は、水について無頓着な人が多い。いまだに「日本は水資源が豊かな国だ」と勘違いしている人が多いことでもそれがわかる。

実際は日本人が水に困らないのは、農産物の形で他国の水(仮想水)を実質的に輸入しているおかげである。野菜を作るのにも、肉を作るのにも、あるいは化学製品を作るのにも膨大な水が要るのである。

国内で必要な水の半分以上をそうした形で買っている「水輸入大国」である日本は、それ(仮想水)がなければあっという間に干上がってしまうのが現実である。1億3000万人を養うだけの真水が、この国土には存在しないということだ。

穀物自給率を上げるべきという声には私も賛成だが、それは同時に相当な量の「農業用水」が必要になるという意味でもあり、水不足にどう対処するかというやっかいな別問題の登場を意味する。

話は戻って、本作を見ると世界中でおきているとんでもない事例の数々を知ることができる。マレーシアでは水を汚すと死刑、なんて話を聞くと、中国でその法律があったら人口が10分の1以下になるんじゃねーのとか、あまり役に立たない妄想力が刺激される。

大企業の容赦のないビジネス手法も本作の大事なテーマのひとつ。テメエの国の水を、なぜか外国の水会社からバカ高い金を出して買わされる、理不尽な状況には思わず唖然。具体的な国名、社名も出てくるので、興味のある人はメモ片手に鑑賞のほど。

その他、IMF、アメリカ、中国、米軍等々、この手のドキュメンタリーではおなじみの悪役たちが爽快なまでに叩かれまくる。仮想水をやりとりすりゃいいじゃないか論についても、ばっさり切り捨てる。

なんといってもこの作品は、マイナス情報のオンパレード。ダムについても効能などは無視。ダメといったらダメ。私がイヤだからイヤなのと叫ぶ、反論不可能最強状態の女子高生並の厳しさである。

そしてそれが小気味よい。格好だけ中立を装って、そのじつトンデモな結論を観客に受け付けようとする偽善的なものよりは、主張がはっきりしていて潔い。ひとつひとつのショットが短く、テンポもすこぶるよい。思い切り意図的にぶった切られ、編集された専門家の意見のパッチワークをみていると、たくさんの無防備な人が「洗脳」されてしまうに違いない。

ということで、これはあくまでひとつの意見。極端なある一方からの主張であると理解したうえで見ることをすすめたい。退屈しらずのつくりになっているし、初心者でも十分理解できるレベルの内容になっている。もちろん、映像ならではの新たな発見を、水問題に詳しい人々にも与えてくれるだろう。

「水」戦争の世紀 (集英社新書)
原作というかタネ本です。
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お子様との晩酌にも使えます。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
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