『監獄島』70点(100点満点中)
The Condemned 2009年12月19日(土)、シアターN渋谷他全国順次ロードショー! 2007年/アメリカ/上映時間:113分/提供:ポニーキャニオン 配給:ブロードメディア・スタジオ
監督・脚本:スコット・ワイパー 脚本:ロブ・へデン 製作:ジョエル・サイモン 出演:スティーブ・オースチン ヴィニー・ジョーンズ リック・ホフマン

意外な社会派ものであることに注目してほしい

アメリカ最大のプロレス団体WWEは、かなり前から映画制作にも進出している。そこでは自団体の選手を積極的に起用しているわけだが、みな第二のザ・ロックを目指せとがんばっている。

最高の肉体と、それなりの演技力を持つ大男たちを大勢擁するプロレス団体が作るのだから、当然アクション映画はお手の物。プロレスのバトルロイヤル(大勢をリングで乱戦させ、最後に勝ち残った選手が優勝)そのもののプロットである、『監獄島』のような映画ならなおさらであろう。

絶海の孤島に世界中から極悪死刑囚10人が集められた。その一人コンラッド(スティーヴ・オースティン)は、他の連中と同じように足首に爆弾を巻かれた上で、ルールの説明を受ける。それは、時間制限の元に殺し合い、一人だけ生き残った場合は恩赦と大金が得られるというものだ。主催者はそれをネットで生中継し、莫大な利益をあげようとしているらしい。

最近、ニコニコ動画ではメンヘラな方によるリストカットの生中継が人気のようだが、こちらは大男同士の殺し合い。10人の死刑囚の中には美人のお姉さんや日本人武道家などバラエティに富んだ人材が集められ、迫力満点だ。彼らは協力したり裏切ったり、愛し合ったりと、退屈しらずのドラマを繰り広げる。

ユニークなのは、そのゲームの開催方法、撮影方法に極力リアリティを持たせ、「誰かがやろうと思えば、起こり得るかもしれない」と思わせる形にしてあるところ。このあたり、米国で大人気のリアリティ番組(「サバイバー」など)からヒントを得た上で、その製作陣などを皮肉っていることは間違いない。

さらに驚かされるのは、どこからみてもお気楽B級バイオレンスな本作が、きわめて社会派な一面を持っている点。

考えても見てほしい。お茶の間のテレビ(またはPC)の前で、人間同士の殺し合いを見ることは、はたしてそんなに絵空事だろうか?

否。私たちは皆、同じ事をとっくに体験している。もちろん、湾岸戦争以来繰り返されてきた、「戦争のお茶の間イベント化」の事である。

現代の先進国では、戦争とはテレビで見てやいややいやと楽しむもの。映画『監獄島』の中で、死刑囚の殺し合いをみて大騒ぎする観客たちと、現実の私たち。そこに何か違いがあるか? あるはずがない。

『監獄島』は、米軍の戦い、殺し合いをテレビで見ていた米国民への痛烈な皮肉、批判である。そしてそこで彼らが語ることは、なかなか的を射ている。

こうした「せんそう反省もの」は、本サイトを熟読している皆さんならすぐにピンと来るだろう。そのテーマは、少し前のアメリカ映画のトレンドのはずだ、と。

そのとおり。日本の配給会社が、これを09年のラブリーなクリスマス映画として公開するという、気の違った事をやっているからわかりにくいが、本作は2007年の春に米国で公開されたもの。だから、内包する戦争反省のテーマがやや古びているのである。

ガチムチなスティーヴ・オースティンの体型はなんだかキン肉マン消しゴムみたいでかわいらしいし、CGを使わないアクションも重量感がある。日本人アクター、マサ・ヤマグチの軽快な動きも切れ味抜群。

だが、そんな見せ場と同じくらい見ごたえのある社会派な一面があるということも、心の隅においていただけると、より本作を楽しめるだろう。

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かっこいい。
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日本にもこういうのがあるけど、出来はひどいです。


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