『ニュームーン/トワイライト・サーガ』60点(100点満点中)
The Twilight Saga: New Moon 2009年11月28日(土)、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/2時間11分/配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント
原作:ステファニー・メイヤー 監督:クリス・ワイツ 脚本:メリッサ・ローゼンバーグ 出演:クリステン・スチュワート ロバート・パティンソン ダコタ・ファニング マイケル・シーン

なぜかいつも裸のマッチョくん

若い女性の皆さんが思い切り感情移入して楽しむファンタジック・ラブストーリーのパート2である本作は、相変わらず障害だらけの恋にイケメン&美少女が悩まされる胸キュンな展開が楽しめる。

18歳の誕生日を迎えたベラ(クリステン・スチュワート)は、普段なら楽しいバースデーを憂鬱な気分で迎えた。なにしろ恋人のヴァンパイア、エドワード(ロバート・パティンソン)は不老不死な上、外見は永遠に17歳で止まったまま。このままでは、自分だけが老いてしまう。はたしてそれでもエドワードは変わらず愛してくれるだろうか。そもそも、そんないびつな恋に自分自身が耐えられるのか。悩めるベラを支えたのは幼馴染のジェイコブ(テイラー・ロートナー)。献身的かつ積極的な彼は、やがてベラとエドワードの間に割り込んでいく。

前作「トワイライト〜初恋〜」で主演の二人が大ブレイクした上、私生活でも噂になっていることもあり、観客の期待と話題性は段違いの第二弾。監督が変更になったため、作風が多少変わってしまったのがやや残念。パート1の、常に雨雲に包まれどこかロマンティックな独特の作品世界は、無味乾燥な灰色世界になってしまった。

今回ヒロインのベラは、18歳にして早くも「年齢」に悩まされる。年の差に悩む恋なんて、ロマンス映画の定番ネタだが、トワイライトシリーズの場合はしゃれではすまない。なにしろ放っておけば自分だけが婆さんになってしまうのだ。たとえ18の少女だって、美貌を失うのは怖い。彼女が愛するエドワードと同じ種族になりたがるのは、当然の帰結だ。だがしかし、エドワードは様々な理由からその選択を躊躇している。

これと平行して、今回は文字通りのかませ犬が登場する。だがこの犬がなかなか魅力的なライバルで、「年下なのにマッチョで頼もしい」という、絶妙なキャラクター。好きな子の前ではあふれるテストステロンを抑えきれず、たまに狼になってしまったりするあたり、いかにもな思春期ボーイである。

しかもこの少年ときたら、どういうわけかいつも上半身裸。演じる役者が「14kgもバルクアップした」と誇らしげに語るキレのいい大胸筋を誇示しまくる。ここが赤坂の檜町公園であれば逮捕されそうなくらいの露出度だ。この肉体のインパクトがすご過ぎて、かませ犬ながら本命のエドワードを存在感で圧倒する。

これは面白くなってきた。まさに、肉食男子vs.草食男子。ベラちゃんのハートを射止めるのは果たしてどちらか?

その他のキャラクターでは、個人的にはエドワードの姉的ポジションのアリス(アシュリー・グリーン)がイチオシ。ヒロインとも仲が良く、予知能力があるためMAILER DAEMON でも心通じ合える便利メル友である。正直なところ、主役のクリステン・スチュワートより、ずっと可愛く見える。

その上、わずかな出演時間だが元名子役のダコタ・ファニングも吸血鬼王家の一人として登場。美少女から正統派美女へと変貌中の彼女は、貫禄たっぷりな演技力もあって漂う大物オーラは段違い。色々な意味で、あんまり主役を追い詰めないでほしい。

化け物相手にモテモテのベラちゃんは、今回他の男に言い寄られ陥落寸前。よその男とのキスシーンでは、「いやーん、しちゃだめー」との女子客の叫びが聞こえてくるようだ。確信的なラストシーンもたまらない。今回、ファンはきっと大喜びであろう。

アクションシーンの出来がなかなかよかったため、逆にその少なさには物足りなさが残る。また、途中エドワードがストーリーから離脱する時間が長く、その間ヒロインの「悩める少女」ぶりが続くためグダグダする。むろん、どちらもメインターゲットのティーン女子にはどうでもいいことだろう。

年下16歳の純粋マッチョボーイ(いつも裸)には、アラサー、アラフォーな熟女たちの目も輝くに違いない。2作目にして、あらゆる年代の女性ファンをかき集めるトワイライト・サーガの勢いは、まだまだ衰えそうにない。



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