『きみがぼくを見つけた日』55点(100点満点中)
THE TIME TRAVELER'S WIFE 2009年10月24日(土)、丸の内ルーブル 他 全国ロードショー 2009年/08/14/アメリカ/カラー/107分/配給 ワーナーブラザース
監督:ロベルト・シュヴェンケ 脚本:ブルース・ジョエル・ルービン 原作: オードリー・ニッフェネガー 出演:レイチェル・マクアダムス エリック・バナ アーリス・ハワード
タイムトラベラーとの恋はこうなる?
公開したばかりの『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』を私はオススメにしたが、幸い見た人たちの満足度も高かったようだ。この『きみがぼくを見つけた日』も同じくタイムトラベルものだが、あのシリーズからサスペンス色を消し、甘いラブストーリー仕立てにしたような一品。
ヘンリー(エリック・バナ)の前に、クレア(レイチェル・マクアダムス)と名乗る二十歳ほどの女性が姿を現した。なぜか自分に対しラブラブ状態のクレアを前に、わけもわからぬままとりあえず部屋につれこんだヘンリーは、やがて驚くべき告白を受ける。彼女ははるか昔、幼い頃から何度もヘンリーと会っており、ずっと憧れていたというのだ。
ヘンリーさんが忘れんぼうというわけではもちろんない。いくらなんでもレイチェル・マクアダムス(年齢やや不詳)のような美人を口説いた経験を忘れるはずはない。じつはヘンリーの正体はタイムトラベラー。しかし時間移動を制御することはできない。つまり、ヘンリーは将来、過去にタイムスリップして、その時代のクレアと出会う運命ということだ。
奇妙奇天烈なラブストーリーである。目の前に二十歳の美女がお目目キラキラ状態でやってくれば、そりゃとりあえずHしときましょうとなるのも無理はない。相手もどうやらその覚悟できているのだからエロい。
だが男たるもの、それですとんと恋に落ちるのはいかがなものか。クレアからすればもう10数年来の恋のお相手かもしれないが、はたからみれば宗教か保険のメンヘラ勧誘員である。トントン拍子な話の進行に、少々おいてけぼりになる。
ヘンリーのタイムスリップは、ある日突然、まったく予期せぬ時代にすっ飛ばされる「偶発的事故型スリップ」というべきもの。過去を変えてどうこうするというより、抜けたパズルのピースが神の手で埋められるように、しかるべき流れを作り出すために過去に「戻されている」といった印象だ。
普通の恋愛でも、とりあえず身体から入りましょうという事はよくある。その究極形ともいうべきこのラブストーリーは、その後、びっくりするくらい若いヒロインの元に飛んでいくヘンリーが、こんどは恋愛……というよりその種をまいてくる展開になる。最初はクレアだけが、今度はヘンリーだけが、二人のその後の熱愛運命を知っている。
思考実験としては面白いのだが、人間を描く前に早足でお話ばかりが先にいきすぎる印象。ストーリーを描く事ばかりに夢中になってしまった感じだ。今がトラベル元(現在)か、トラベル先(過去?未来?)なのかわかりにくい画面作りも不親切。
時間移動は全裸で行うという、ターミネーター式のルールが主人公の運命を左右する大事な伏線になってはいるが、やはりギャグ一歩手前の設定なのは否めない。のどかな草原の植え込みから、エリック・バナのような大男(身長約190cm)がフルチンで出てきたら、普通の少女は逃げるだろう。どこから見ても露出狂のおじさんである。
とはいえ、そこから時空を超えた恋愛物語(最後は涙)に仕上げてしまうのだからある意味すごい。『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンが、念願だったという感涙小説の映画化。ロマンチックな恋物語に涙したい女性向きの、甘ずっぱい一本だ。