『仏陀再誕』25点(100点満点中)
2009年10月17日(土)公開 2009年/日本/カラー/114分/配給:東映
原作/大川隆法『仏陀再誕』 監督/石山タカ明 脚本/大川宏洋 声の出演:子安武人 小清水亜美 吉野裕行 白石涼子 置鮎龍太郎
悟りにチャレンジ
『仏陀再誕』は、この秋300万人の動員を目標とする、日本アニメーション期待の超話題作である。
女子高生、天河小夜子(声:小清水亜美)は、名物記者の金元にあこがれ、ジャーナリストを目指している。ところがその金元が自殺して以来、彼女には霊のようなものが見えるように。一方、ある宗教団体の教祖は奇跡を連発、テレビで大人気となるが……。
子安武人や銀河万丈、三石琴乃といった実力派声優と、業界有数のVFXスタッフをそろえた、まさにジャパンアニメーションの総力を結集した超大作。エル・カンターレことブッダの生まれ変わり、大川隆法(幸福の科学)が製作総指揮として、自らの大ベストセラーを息子の大川宏洋脚本でアニメ化したものである。
「幸福の科学」といえば、先日衆院選にもチャレンジし、民主党にわずか及ばず惜敗を喫したものの、これまで合計6本のアニメ映画を製作しており、その資金力、企画力には定評がある。今回も、300万人もの動員をぶちあげ、興収ランキング1位を狙う。国内では、角川が社運をかけた実写大作の「沈まぬ太陽」でさえ、組織動員は50万人程度が限度とされている。いかにこの目標が物凄いかわかるだろう。
アニメーションとしては、とくに奇をてらわぬ、平凡な雰囲気の真面目な女子高生ドラマ風に始まる。ミニスカートがよく似合う美少女ヒロインは、まっすぐな性格で学校新聞の制作に精を出す。最近あまりうまく行ってない彼氏……というか元彼がいて、時折カフェなどでさりげなく所属する教団へ勧誘してくるが、それなりに充実した学園生活を送っているようだ。
ところが学校新聞の取材で、ある巨大教団の説法に出かけてから、急に物語は動き出す。驚異的な能力で奇跡を起こすその悪しき教祖に、あやうく取り込まれそうになるところを救うのが、例の勧誘彼氏と彼が所属する正義の秘密組織(=宗教団体)TSIだ。てっきり真性の中二病かと思っていたが、彼こそ本物のヒーローだったのだ。
ここから先は、冒頭の高校ドラマからは予想もつかない大スペクタクルが乱発される。その規模たるやローランド・エメリッヒも真っ青で、地球存亡の危機にヒロインとTSIメンバーが命がけで立ち向かう大アクションとなる。
TSIのリーダーは、スーツの似合うどこか大川隆法を思わせる穏やかな男で、クライマックスの大決戦では、金色の絵の具を惜しみなく使ったきらきらな映像で、すさまじい法力戦を見せる。目に焼きつきそうな黄金色がまぶしい。
ユダヤ人の霊が日本語でしゃべっていたり、チラシとパンフのストーリー紹介がまるっきり別物だったり、さりげない入浴シーンがあったりと、見所をあげたらきりがない。ネタバレを気にせず突っ込みを入れられる一般ブロガーにとって、これほど美味しい作品はほかにない。われこそはと思う勇者は、メモ片手に初日の初回に行くべきだ。
個人的には、大川隆法作詞のエンディングテーマ「悟りにチャレンジ」の、強烈なインパクトにしてやられた。エンドロールには協賛企業の名前がずらずら並び、いろいろな意味で目が離せない。最初から最後まで楽しめるアニメーション長編。この秋、きみもぼくも、悟りにチャレンジだ。