『ATOM』90点(100点満点中)
Astro Boy 2009年10月10日(土)より新宿ピカデリー他全国ロードショー!! 2009年/アメリカ/カラー/95分/提供:角川エンタテインメント 配給:角川映画 , 角川エンタテインメント
原作:手塚治虫「鉄腕アトム」 監督:デビッド・バワーズ 脚本:ティモシー・ハリス 声の出演:フレディ・ハイモア クリスティン・ベル ネイサン・レイン
ぜひ小さい息子さんとご一緒に
手塚治虫の代表作で、日本アニメの元祖的存在「鉄腕アトム」は、意外だがこれが初の劇場版となる。製作したのは香港発のアニメ制作会社「イマジスタジオ」。そこにハリウッドスターが声を当て、米国では300スクリーン越えの大規模公開、その他50カ国以上で上映が予定されている。日本原産のコンテンツとしては、大本命といってよい話題作である。
未来都市メトロシティの科学省長官で天才的科学者のテンマ博士(声:ニコラス・ケイジ、役所広司)は、幼い息子のDNA情報を埋め込んだ最新鋭ロボット、トビー(声:フレディ・ハイモア、上戸彩)を作り上げるが……。
オリジナルの66年版アニメーションはもちろん、80年のリメイク版を楽しんだ世代でさえ、今はとっくに"父親"になっていることだろう。そうした事情を受けてかこの映画版は「父と子の関係、息子への愛」に焦点を当てた、感動ドラマとなっている。
かつてアトムに感情移入した少年たちは、数十年を経て今度はテンマ博士に共感することになる。映画化のコンセプトとしてはこれで正解だったと思う。むろん、小さい子供たちは無邪気にアクションシーンに興奮する。親子で別の味わい方が可能な作品だ。
米市場向けだから3DCGとなるのは当然だが、これが意外なほど違和感がない。構図やアクションの組み立てに工夫がなされているのか、まるで2Dのジャパンアニメーションを見ている感覚。アトムの美少年顔は、科学の子というよりマネキンの子、といった風貌で、何度見ても偽者ぽいというか、女の子が美化して書いた二次創作のようにしか思えないが、それでも動き出すとスンナリ頭に入ってくる。
何しろ監督以下、アトムで育った「マニア」なスタッフ・キャストがそろっている。ニコラス・ケイジなどは出演のオファーを二つ返事で受けたそうだし、彼自身、ずっとアトムをハリウッド映画にしたかったほどの大ファン。念願かない、きっと涙を流して小躍りしたに違いない。
ちらっと時事ネタや日本ネタをはさむ余裕も見せながら、脚本面ではしっかりと伏線⇒回収の基本を踏襲。ハリウッド映画らしい、気持ちのいいラストショットも必見だ。
日本ではほとんどこちらを見ることになる日本語吹き替え版も、声優経験豊富な上戸彩が健闘し、上々のできばえ。
アトムくらいの息子さんがいる方は、これは絶対に見てほしい1本。そういう方がお子さんと一緒にみたら、表記の点数くらいの満足、感動を得られるに違いない。ちなみに、エンドロールの途中で席を立たないほうが、5点分くらいはいい思いをできる。