『あの日、欲望の大地で』80点(100点満点中)
The Burning Plain 2009年9月26 日(土)よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ他にて全国順次ロードショー 2008/アメリカ/英語・スペイン語/カラー/シネスコ/SRD・ DTS・SDDS/106分/配給:東北新社
監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ 音楽:ハンス・ジマー、オマー・ロドリゲス・ロペス プロダクション・デザイン:ダン・リー 出演:シャーリーズ・セロン キム・ベイシンガー ジェニファー・ローレンス ジョン・コーベット

邦題はエロドラマみたいだし、公式資料はネタバレときた

白身魚フライなど、他のおかずが充実していながら「のり弁当」などと控えめに自称する、ほか弁人気メニュー並に良心的な当サイトではそんなことはないが、他メディアによる『あの日、欲望の大地で』の映画紹介には、重度のネタバレが含まれる可能性があるので注意が必要だ。

アメリカ、メイン州の高級レストランのマネージャー、シルヴィア(シャーリーズ・セロン)。仕事もでき容姿も端麗だが、なぜか彼女は行きずりの男とばかりすぐに寝る。どうやら何か心に傷があるようだ。一方、ニューメキシコ州の国境沿いの町では、アメリカ人主婦ジーナ(キム・ベイシンガー)とメキシコ人ニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)が、荒野のトレーラーハウスを密会場所に不倫を重ねていた。

この二つのドラマがどう交差していくのか。その仕掛けはこの脚本を15年かけて構想し、書いたギジェルモ・アリアガ監督がもっとも力を入れたところだろう。しかし、たぶん悪意はないのだろうが宣伝会社の公式資料はそのあたりをまったく考慮していないので、何も気にせずそれを基に原稿を書いたライターたちは、知らぬ間にネタバレ記事を仕上げてしまう可能性がある。

さて、本作の見所はそんなわけで、ギジェルモ・アリアガ謹製の練りに練った脚本。「21グラム」や「バベル」など、本業・脚本家の彼がはじめて監督もする本作は、最初の1秒目から「こりゃ面白そうだ」と感じさせる力がある。監督として、美術面等で脚本の仕掛けを補完する工夫を凝らしているのがよくわかるだけに、このネタバレは痛い。

主演はシャーリーズ・セロン&キム・ベイシンガー。両者ともオスカー受賞の演技派にして、絵に描いたような金髪碧眼の美人女優だ。キムさんは「ナインハーフ」で現在40代くらいの日本人男性に、シャーリーズさんは「ディアボロス/悪魔の扉」あたりで現在30代の男性に、それぞれ白人コンプレックスを植えつけたであろう、印象深いスターである。20歳以上離れているが、今回は二人とも全裸で激しい濡れ場を演じるという、豪華競演状態である。

監督がとくにほれ込んだのはシャーリーズ・セロンの方で、彼女を主演に迎えるため直接5時間も話したとか。さぞ話が弾んだのか、彼女はやがて製作にまで参加するほどノリノリ。スクリーンでもいつもどおりの存在感を示している。あれだけの美女が、そこらへんの男にほいほい股を開く姿は、これ以上ない痛々しさを感じさせる。それが後半の展開にちゃんと効いてくる。

キム・ベイシンガーの中年不倫ドラマも、誰もが感情移入しやすい題材だけにスリルがある。家族の一部に知られ、それとなく追求されるあたりは緊迫感があり異様にリアル。経験者は縮み上がる思いであろう。

二つのドラマの関連が明らかになり、幾多の伏線が収束するラスト。見終わったあと、ヒロインが自暴自棄に男と寝ていた理由がわかる。それは簡単なようで非常に複雑で、これぞ本作が傑作たる所以だが、ここに詳しく記せないのが残念だ。考えれば考えるほど、気配りのなされた優秀な脚本である。

よくわからないという人は、彼女と、彼女のトラウマの原因となった人物の類似性に注目すると、このストーリーの良さがより味わえるだろう。

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こちらもギジェルモ・アリアガ脚本を味わえる一品。
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あー、これいいですねぇ。誰かつけてくれないかな。


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