『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』60点(100点満点中)
X-Men Origins: Wolverine 2009年9月11日、TOHOシネマズ 日劇他 全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/109分/配給:20世紀フォックス映画
監督:ギャヴィン・フッド 脚本:デヴィッド・ベニオフ AND スキップ・ウッズ 出演:ヒュー・ジャックマン リーヴ・シュライバー ダニー・ヒューストン ドミニク・モイナハン ライアン・レイノルズ

ライアン・レイノルズに猛省と筋トレを勧告する

東京メトロの壁には大きなヒュー・ジャックマンの宣伝ポスターが張ってあり、「今度はオレが主役だ」とのコピーが書いてある※前公開作へからの交代、という意味の絵柄でしたのでこの後の箇所を訂正しました(2009/09/14)。そんなわけでスピンオフ超大作『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』である。

舞台は19世紀。不死身の能力を持つ少年ローガンは、同じ力を持つ兄ビクターと家を飛び出し、二人きりで生きることに。彼らはあらゆる戦場でその能力を生かし、やがて他の追随を許さぬ戦闘能力を身に着ける。その活躍を知った軍人ストライカーは、兄弟を特殊部隊「チームX」にスカウトする。

ウルヴァリン誕生までを描く本作のストーリーは、やがてX-MENシリーズの一作目へとつながる。よって、映画でおなじみのキャラクターもチラと出るし、ガンビットやデッドプールなどこれまで原作限定だった人気キャラクターも続々と登場してくる。

ただし、もっともアメコミファンの注目を集めているデッドプールの扱いはひどい。演じるライアン・レイノルズは、妻スカーレット・ヨハンソンとのめくるめく夜の生活に現を抜かしていたか、自慢の腹筋が甘々で、まるで身体ができていない。原作とまったく違ったビジュアルが問題視されているが、これはもう、それ以前の話であろう。

一方、ウルヴァリンを演じるヒュー・ジャックマンの進化は凄まじい限り。シルベスター・スタローンやブルース・ウィリスの指導もやっているハリウッド一のパーソナルトレーナー、ガナー・ピーターソンを迎え、猛烈なバルクアップトレーニングを積んだその成果が見事に現れている。彼は身長が189cmもあるが、ベンチ・プレスは135kg以上あげていたとのピーターソンの証言がある。手足が長い体型はベンチプレスに不利だから、これを使用重量として使えるのだとしたら、もはや一流のアスリート並だろう。

そんなわけで、本作はジャックマンのスゴイ身体を楽しみましょう、というのがまず第一に伝えるべき見所となる。

ミュータントたちのバトルの中で、印象深いのはビクター(主人公の兄)とライス(瞬間移動の能力を持つ)のそれ。短いながらも、勝者の持つ天才性および凄みが伝わるいい戦いであった。

ローガンがウルヴァリンに変わる際の苦しみがあっさりしすぎている気もするが、「シンプルな武器をつかいこなしてこそのヒーロー」という私の持論はしっかり踏襲しており、このシリーズは平均以上に面白い。

よく切れる爪で主人公は今日も悪いやつを成敗。続編は日本にやってくるそうだから、今のうちにこれを見ておいて損はあるまい。



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