『マーターズ』60点(100点満点中)
Martyrs 2009年8月29日(土)より、シアターN渋谷にて、レイトロードショー最終解脱!! 2007年/フランス・カナダ合作/アメリカンヴィスタ/ドルビーSRD/100分/カラー/提供・配給:キングレコード+iae
監督:パスカル・ロジェ メイク・特殊効果:ブノワ・レタン、エイドリアン・モロ 出演:モルジャーナ・アラウィ ミレーヌ・ジャンパノイ カトリーヌ・べジャン イザベル・ジャス

普通の刺激じゃ感じないアナタに

どの映画紹介をみても、これ以上ないほど煽りまくっている『マーターズ』だが、確かに強烈なグロ描写、容赦ない「痛み」の疑似体験効果は映画というジャンルの中では最高レベル。

しかしながら、その内容は一般的なホラームービーとは180度異なる、きわめて真面目・真剣なもので、描くテーマは笑って見られるようなものではまったくない。残酷スプラッターB級ホラーでは決してなので、ご注意を。

70年代のフランス、食肉加工工場跡に監禁されていた少女リュシーは、孤児院に保護される。そこでの親友アンナ(モルジャーナ・アラウィ)の存在によってトラウマを癒し、やがて彼女は美しい娘(ミレーヌ・ジャンパノイ)へと成長する。だが、アンナはリュシーの内面を、いまだ完全には理解していなかった。

この二人の少女が巻き起こす、あるいは巻き込まれるその後の凄惨な運命についてはここでは記さない。とにもかくにも凄まじいから、『ホステル』や『ソウ』など、最近のガチンコ残酷映画に慣れていない人は、いきなりこれに挑戦するのはやめておいたほうがよいだろう。

フランスでは、主演女優探しが大変だったというが、そりゃ当たり前だ。暴力、監禁、拷問、虐待、お肌もお肉もぐっちゃぐちゃ。アナタは何分耐えられますかの世界である。

かように強烈な映画を作り、今ではハリウッドの注目の的となったパスカル・ロジェ監督は、「現代は暴力的な時代だからこそ、これを作った」と語っている。その暴力とは目に見えるものばかりでなく、いわゆる格差社会のように、じわじわと殺していくのが特徴だという。なるほど、いいえて妙。この映画で彼が描いている暴力と、確かにそれは似ている。

ヒロインの一人を演じたミレーヌ・ジャンパノイは、そんな監督とえらく揉めたらしい。撮影では手加減なしで何十発も殴られて、翌朝起きられなかったという。どう考えてもやりすぎである。

もう一人のアンナ役モルジャーナ・アラウィも、撮影中に骨を3本も折る大事故に遭遇。映画そのものより恐ろしい撮影現場というほかない。

そんな『マーターズ』の最大のウリは、観客の感受性を破壊するラストシーン。これが表すのはいったい何なのか。

注意深くみていれば理解しやすいオチではあるが、物議をかもすことは間違いない。お子ちゃまや心の狭い人は要注意の、見て決していい気分にはなれそうにない強烈作。フツーの刺激じゃ感じなくなってしまったアナタにのみ、おすすめしたい。

……といいながら、これでもまるで刺激不足と不満を感じる自分は、我ながら頭がどうかしていると思う。

人の殺され方―さまざまな死とその結果 (DATAHOUSE BOOK)
悪用厳禁。
人殺し大百科
法医学的な内容を一般向けにしたものなのかな。凄そう。


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