『九月に降る風』55点(100点満点中)
九降風 2009年8月29日(土)よりユーロスペース、シネマート新宿 他にて全国順次公開 2008年/台湾=香港映画/35mm/カラー/107分/北京語/提供:アジア・リパブリック 配給:グアパ・グアポ+アジア・リパブリック
監督:トム・リン(林書宇) 脚本:ヘンリー・ツァイ(蔡宗翰)、トム・リン(林書宇) 出演:リディアン・ヴォーン(鳳小岳)、チャン・チエ(張捷)、ジェニファー・チュウ(初家晴)、ワン・ポーチエ(王柏傑)

台湾で高く評価された青春ドラマ

青春映画というジャンルは、万国共通に作ることもできるがその逆もできる。エピソードに時代性・地域性を加えるほど、深い領域まで観客に共感してもらうことが可能だが、作品としては後者に近づく。広く浅くか、狭く深くか。『九月に降る風』は比較的後者、ドメスティックな台湾人アラサー男子向けの青春ドラマだ。

96年、台湾球界がスキャンダルに揺れる事になる時代。野球好きの高校3年生タン(チャン・チエ)は、不良の烙印を押されながらも、かけがえのない仲間たちと遊びまわる幸せな日々をすごしている。グループのリーダー、イェン(リディアン・ヴォーン)とは親友同士だったが、浮気っぽい彼の態度に悩む恋人ユン(ジェニファー・チュウ)の相談に乗るうち、恋心が芽生えていく。

その年の台湾映画界で最高の評価を得た青春ムービーは、時代を表す球界の大事件をうまく物語に絡めつつ、なつかしエピソードを畳み掛ける構成。

夜中のプールに素っ裸で入ってビールを飲むとか、「あるある」的なリアルなアイデアの数々は、脚本も書いたトム・リン監督の実体験によるところが大きいとの事。裸にはならなかったが、そういえば私自身、そんな事をした記憶がある。

そんなわけで、本作で描かれる小ネタの中は、日本人にも響く部分がいくつかある。日本の漫画本が背景に見受けられるなど、台湾の若者と自分たちの共通項を見て、興味深く感じる人も多いはずだ。同時に、「違い」の部分についても。

異文化を擬似体験できる『九月に降る風』は、台湾の人々の内側、あるいはルーツのようなものを覗き見る面白さがある。逆に言えば、そこに楽しさを見出せない人、青春映画に感情移入したい人にはあまり向かない。

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