『ナイト ミュージアム2』60点(100点満点中)
Night at the Museum: Battle of the Smithsonian 2009年8月12日(水)、TOHOシネマズ日劇他全国超拡大ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/105分/配給:20世紀フォックス映画
監督:ショーン・レヴィ 脚本:ロバート・ベン・ガラント、トーマス・レノン 撮影:ジョン・シュワルツマン 出演:ベン・スティラー エイミー・アダムス ロビン・ウィリアムズ オーウェン・ウィルソン
スケールアップした続編に、アメリカ人の気弱な本音が垣間見える
『ナイト ミュージアム2』は、全米興行ランキングで本命視されていた『ターミネーター4』を打ち破り、堂々のトップを飾った。確かにこれを見ると、いまどきのアメリカ人の心理、何を求めているのかがわかるようで興味深い。
前作から数年後。相変わらず毎夜動き回るNY自然史博物館の展示物たちは、改装のためワシントンのスミソニアン博物館へと移送されることになった。ところが例の魔法の石版のせいで、スミソニアンの展示物まで動き始めたからさあ大変。元警備員のラリー(ベン・スティラー)は再び騒動を静めるべく、現地に向かうが……。
石版の力で博物館の展示物が動き出すというアイデアの第二弾。世界最大の博物館(群)、スミソニアンに舞台を移したことにより、スケールは大幅アップ。世界的に有名な博物館であるから、アメリカ人以外にもおなじみのあれやこれやが動き出す姿に、私たちは驚かされる。ハリウッドにとっても世界中の博物館の数だけ続編ができる、いい鉱脈が見つかったというわけだ。次はぜひ上野の山に来ていただきたい。
とはいうものの、現実的にはこのワンアイデアだけで観客の興味を持たせるのは厳しい。そこで今回は、実在の歴史上の人物アメリア・イアハートと主人公の、朝になれば消え去ることがわかっている切ないロマンスをからめることにした。
アメリア・イアハートは、その破天荒な人生と大衆の興味を引く最期から、いまだに大金を投じてその行く末を探す人々が存在するほどの人気者。女性初の大西洋単独横断飛行の記録を打ち立てた、アメリカの誇る歴史ヒロインだ。
演じるのは、人気急上昇中のエイミー・アダムス。気は強いが心優しい魅力的な女性としてうまく表現しており、タイトフィットな乗馬パンツが似合う姿は、まさに美尻クイーンの名にふさわしい。もっとも、たった今私が名づけたばかりだが。
彼女の登場をはじめとして、全編「アメリカ」への肯定感にあふれているのが、本作最大の特徴。
映画の中のスミソニアンに並んでいる展示物は、もちろん世界中から集めたもので、自国由来のものはむしろ少数派といってもいいほどだが、それは世界からの移民で活力を得ている彼らの国の成り立ちそのもの。長い歴史を持たないアメリカが、自国を肯定しようとすると、こういう映画が出来上がる。大変興味深いことだ。
『ターミネーター4』さえ蹴散らした理由、この映画が愛されたわけもその辺にあるのだろう。彼らはいま、自分たちを認めてほしいということだ。
スミソニアンだろうがどこだろうが、今は不況で博物館の経営は非常に厳しいと聞く。彼らが館内での映画撮影を史上はじめて許可したのも、わかる気がする。楽しく家族で映画を見て、今度はそのロケが行われた本物の博物館に行く。そんな形でお互い盛り上がれば、何よりといったところか。
前作はベン・スティラーと子供の父子ドラマの趣も強かったが、この続編はアトラクション風味がよりアップした。小さな子供たちも、飽きずに楽しめることだろう。