『ココ・シャネル』75点(100点満点中)
Coco Chanel 2009年8月8日よりBunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館他にて全国ロードショー 2008/アメリカ・イタリア・フランス/138分/カラー/配給:ピックス
監督:クリスチャン・デュゲイ 脚本:エンリコ・メディオーリ コスチューム・デザイナー:ピエール=イヴ・ゲロー 出演:シャーリー・マクレーン バルボラ・ボブローヴァ マルコム・マクダウェル
ファッション業界一のカリスマの波乱万丈な人生
創業100周年ということで、3本のシャネル映画が封切られる予定だが、その先鋒をつとめる本作も期待通りの見事なできばえであった。
本作は劇映画の形式を取った伝記ドラマで、物語は1954年、久々にファッション界に復帰したココ(シャーリー・マクレーン)の新作ショーが不振に終わり、彼女が過去の栄光を回想するところから始まる。
興味深いのは、本作で若きココを演じるバルボラ・ボブローヴァが、もうひとつのシャネル映画『ココ・アヴァン・シャネル』(9/18から公開)でココ役を演じるオドレイ・トトゥにどこか似た雰囲気を持っていること。
ご存知のとおりオドレイ・トトゥはシャネルの代名詞ともいうべき香水の傑作「Chanel No5」のイメージモデル。このブランドの考えるシャネル本人のイメージとは、こういう女性なのかと強く思わされる。上品で可憐だが強く、しかし嫌味が無い。
この映画もまさにエレガントのきわみ。数々のドレスが登場するファッションショーの場面は圧倒的だし、シャネルといえば……のあのアイテムの制作秘話が明かされるくだりも、大いに楽しめる。なるほど、彼女がツイード素材を使ったのは、そういう理由があったのか。
さすがは超一流ブランド。イメージとストーリー作りに関しては、なんといっても彼らはプロ中のプロである。極端に言えば本作はシャネルのプロパガンダ以外の何者でもないが、最高に気持ちよく酔える、極上の出来栄えであることは間違いない。
シャネルを着たい人、着ている人は絶対に必見だし、この映画で語られているブランドストーリー、創業者の信念を知らずに着るほど無粋なこともない。一流の服のデザイン、素材には必ず意味があり、それを知ることが服好きにとっては何よりの楽しみなのだから。
波乱万丈の人生を回想したココが、再び54年に戻って見せる表情。シャーリー・マクレーンの、まさに王者の風格と評するほか無いすばらしい表情に、私は感動した。ファッション映画に外れなしとは、常々思っている映画格言のひとつだが、そのリストにまたひとつ、良作が加わったようだ。
これを見てシャネルに惚れ込み、彼女のデザインした(正確にはカール・ラガーフェルドが受け継ぎ発展させた)高価なお洋服をほしがる女性(ねだられる男性)がきっと多数生まれることだろう。それも悪くはない。あのエレガントな香水も一緒につけてもらえるのなら、まぁ。