『HACHI 約束の犬』60点(100点満点中)
Hachiko: A Dog's Story 2009年8月8日(土)より、全国拡大ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/93分/配給:松竹
監督:ラッセ・ハルストレム 製作:リチャード・ギア、ビル・ジョンソン 脚本:スティーヴン・P・リンゼイ 出演:リチャード・ギア ジョーン・アレン
泣ける度は100
『HACHI 約束の犬』の主人公ハチ役は秋田犬、いわば日本人だから、この映画がアカデミー主演男優賞をとれば初の日本人受賞。
そんな冗談を飛ばしたくなるほど、この犬の演技はすごい。とくに老犬バージョン、いったい誰があんなメークをしたんだと叫びたくなるほど、出てきた瞬間「これはヤバい」と思わせる。いずれにしてもこの映画、泣ける度だけなら100点。フジテレビ開局50周年記念、『ハチ公物語』(87年)のアメリカ映画版リメイクの名にふさわしい、号泣実話動物映画である。
舞台はアメリカ郊外のベッドリッジ駅。迷い犬の子犬を拾ったウィルソン教授(リチャード・ギア)はハチと名づけ、家族の反対を押し切って自宅で飼うことに。強い絆で結ばれた教授のため、ハチは毎日駅まで送迎するほどで、駅前の人々の間でも有名であった。ところがあるとき、勤務先の大学で教授の身に事件がおきる。
有名なハチ公の実話は、朝日新聞が世に知らせて以来、いまでは世界中の犬好きの間で有名という。親日家リチャード・ギアがこの脚本に大粒の涙を流し、同じ犬好き仲間のラッセ・ハルストレム監督を引き込んで、自ら主演で映画化しようと考えたのも、当然の流れだったのかもしれない。
舞台はアメリカに移ったが、物語の本質はなんら変わることなく再現されている。犬種を秋田犬にこだわるなど、日本への尊敬の念を大いに感じられる映画化である。ハリウッドならば、ハチ公をマルチーズかチワワにして、CGでぐにゃぐにゃ表情を作るくらいの事をやっても不思議ではないが、本作では幸いそのようなことはない。それはそれで見てみたいが。
とはいえ、「犬の視点」を表現するなどといった、リメイク版ならではのささやかな試みは行われており、しかもおおむね効果を挙げている。
米国では、動物愛護協会が撮影を監視するので動物好きのお客様も安心。邦画の子供だまし動物映画にありがちな「犬好きへの過剰な媚びショット」も見受けられず、好感が持てる。これがヒットすれば渋谷のハチ公前に外国人観光客が押し寄せて経済効果も抜群、めでたしめでたし、だ。
8月8日公開、フジテレビらしいハチ並びの本作はさて、どこまでポテンシャルを秘めているか。