『学校裏サイト』40点(100点満点中)
2009年7月25日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次公開 2009年/日本/カラー/109分/ステレオ 配給:ジョリー・ロジャー+トルネード・フィルム
監督:福田陽平 脚本:山本清史、福田陽平 主題歌:+Plus(プラス)『GAME OVER』 出演:山田悠介 水沢奈子 白石隼也 聡太郎 黒田耕平

アイデアはいいが、まだまだ未完成

真面目にやらない学生ってのは大抵暇なもので、思春期特有の「他者の目を異様に気にする性質」もあって、ろくでもないことに多大なエネルギーを費やしている。それは前髪のセット具合だったり、携帯メールの返信レスポンスの速さだったりと、人生の無駄遣いとしかいいようのないもろもろである。

もっとも、「暇なヤツほど世間体を気にする」という点では、主婦や閑職のサラリーマンも同じかもしれないが……。

ともあれ、そんな「余命の無駄遣い」の最たるものといえば、学校裏サイトをはじめとするネットコミュニティーに違いない。むろん、すべてが無駄とは言わない。市場の生の声を集めたり、海外の人間とリアルタイムでコミュニケーションをとるなど、有効な場、使い方はいくらもある。

しかし、匿名でクラスメートの悪口を書き込んだり、閲覧することほど無駄な事はないという点では、誰もが意見の一致を見るだろう。

しかし現実には、そんな『学校裏サイト』(主にプロフ・掲示板方式で、学校内のゴシップ、悪口といった話題で盛り上がるウェブサイト)がごまんとあるという。そこで消費された無為な時間を金に換算したら、きっとリーマンブラザーズが抱えていた負債くらい、軽く吹き飛んでしまうに違いない。

映画『学校裏サイト』は、そうした流行をとらえたアクションの小品で、なかなか愉快なアイデアがいくつか見られる。

生徒会長・藤原(山田悠介)は、いじめられっ子の一人が自殺未遂した事件を契機に、何者かの襲撃を受けるようになる。調べてみると、どうやら自分も登録したプロフサイトの掲載者同士が戦っているらしい。もしも負け、相手に携帯を奪われてしまうと、自分がもっとも隠したい「秘密」が全員にバラされてしまうという。一方、勝った者はポイントを獲得し、それを使って自分の「秘密」を削除したり、現金に換える事もできるという。

そんなわけで、絶対に隠したい過去がある主人公は、いやおうなしにこのサバイバルゲームに参加し、最後まで勝ち抜かねばならなくなる。

母親に服を選んでもらってるとか、粗チンであるとか、参加者が隠したい「秘密」は正直どうでもいいような事ばかりなのだが、そんな些細な事のために、殺し合いに発展するあたりが皮肉が効いている。大人になれば、いくらでも持ちギャグにできるような、むしろメリットでさえ子供にとっては悩みの種というわけだ。

ただ残念なのはこれ、アイデアばかりが突出し、それをまったく消化できていない。

たとえばゲームのルールにしても、わかりにくいし穴がありすぎる。携帯を奪うだけなら、なにも殴りあいや殺し合いをする必要などないし、街中で追いかけられたところで交番に駆け込めば済むだけの話。やる意味もないバトルをやっているこの映画の高校生たちは、まるでただのバカだ。そう見えるようにしてしまったのは、脚本家と監督の責任である。

大人たちの「表の社会」には何の影響も与えず、その気配すら見せず、裏側=「子供たちの社会」で、壮絶な殺し合いが行われている──そんな構図をもっと煮詰めたらよかった。

アイデア元であろう『バトルロワイヤル』や『GANTZ』『リアル鬼ごっこ』といった不条理劇には、素っ頓狂ながらその作品世界を十分に支えている、練りに練られた設定の妙があった。この映画に足りないのはまさにそれだ。もし小説やマンガならば、この程度の完成度ではたぶん出版できまい。でも映画なら許される、となればそれはあまりにも悲しい事だ。

狙いはいい筋をいっているし、パルクールを主体としたアクションもまだまだ新鮮。だからこそ、あと少し、頭を絞っていただきたかった。大変惜しい、もう少し頑張って。

「学校裏サイト」からわが子を守る! (中経の文庫)
原作はケータイ小説だそうですが。この手の問題をちょいと調べてみたくなりました。
ネットいじめ (PHP新書)
大人になれば、たとえネットでいじめられても、飲み会で自虐ネタにして優しい女の子の関心を引くことができるので心配要りません! 絶対自殺なんてしちゃだめですよ。


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