『ごくせん THE MOVIE』30点(100点満点中)
2009年7月11日公開 全国東宝系ロードショー 2009年/日本/カラー/118分/配給:東宝
原作:森本梢子(「ごくせん」集英社 YOUコミックス 刊) 監督:佐藤東弥 脚本:江頭美智留、松田裕子 出演:仲間由紀恵 亀梨和也 生瀬勝久 高木雄也

お好きな人だけどうぞ

日テレにとっては社運をかけたであろう『ごくせん THE MOVIE』は、積極的な宣伝の甲斐あって、それなりの興行成績を残しそうな勢いだ。

とはいえ、主人公ヤンクミを演じる仲間由紀恵の降板が決まっていることもあり、映画で新たなファン層を開拓しようという気はまったくない。むしろ、ほとんど渇き気味の雑巾を絞るきるように、これまでのファンからどれだけ1800円をかき集められるかに焦点を当てたコンセプトの映画化といえる。

担任教師、ヤンクミこと山口久美子(仲間由紀恵)は、新しい3年D組の生徒たちとまだ心を通じ合えていない。そこにかつての教え子小田切竜(亀梨和也)が教育実習生としてやってきて、彼女を喜ばせる。そんなある日、不良生徒の一人がトラブルを起こす。彼を疑う学校側に対し、生徒の言い分を信じた久美子は反論するが、そのせいで自らの立場が危うくなってしまう。

脚本に特筆すべき点はなく、いつものごくせんと似たような話が続く。2時間ヤンクミのお説教を聞かされるのは感動的なまでにウザいし、あのギャグを満員の劇場で笑うのは相当恥ずかしいものがあるが、そんな諸々もこれで見納めと思うと感慨深いものがある……かもしれない。

アクションもテレビレベル、お話もテレビレベル。唯一映画らしい点といえば、これまでの登場キャラクターが大勢友情出演するサービスか。

その登場場面のひとつがなんとも笑える。イケメン生徒たちが唐突に出てくるたびにヤンクミが「おお! ○○じゃないか! どうしたんだこんな所で」と叫ぶというやっつけぶり。それが何度も繰り返される。もはや、ストーリーに組み込もうという気すらない。じつに画期的な演出である。

また、仲間由紀恵が再びやる気になればいつでも復活の芽は残しておくよ、という中途半端さが、完結編的な空気をすっかり弱らせており、しまりがない。

いずれにしてもこれを見たい人には、雑巾のしぼり汁になることを承知の上で、それぞれお楽しみください、としか言いようがない。



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