『刺青 匂ひ月のごとく』65点(100点満点中)
2009年6月27日よりユーロスペースにてレイトショー 2008年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/89分 配給:アートポート
原作:谷崎潤一郎(中央公論新社刊) 監督:三島有紀子 脚本:国井桂 劇用刺青:田中光司 出演:井村空美 さとう珠緒 有薗芳記 鈴木一真
井村空美がすべてを見せる官能演技
おっぱい先生の綾瀬はるか、セミヌード公開決定の磯山さやか、入浴ドロンジョ深田恭子と、ホリプロの快進撃(H方面)が止まらない。
かつてホリプロといえば、本格アイドルを次々輩出した名門のイメージだったが、いまやセクシー路線真っ只中。アイドルのお手軽リサイクルなどと陰口をたたく輩もいるが、考えてもみて欲しい。バラドルに再生されるのと、お脱ぎくださるのと、どちらのチェンジが世のためになるのか。オバマ大統領に聞くまでもなく、結論は明らかであろう。
というわけで、井村空美である。
この、綺麗だが大事務所の中でイマイチぱっとしない女優は、このたび谷崎潤一郎の名作にすべてを賭けた。彼の原作による刺青シリーズ(という言い方もなんだが)は、女性タレントの脱ぎ場としてはもはや定番で、これまで何度も夕刊紙の紙面を騒がせてきた。
だが井村空美は、歴代の主演女優の中でも脱ぎっぷりの良さ、そして身体の美しさではピカイチだ。先日公開された姉妹編『刺青 背負う女』の主演・井上美琴のヌードも見事だったが、こちらも捨てがたい。どちらにも、100点をあげたくなる。
『匂ひ月のごとく』のストーリーは、現代を舞台に原作をアレンジ。ダンス教室を経営する美人姉妹(姉がさとう珠緒、妹が井村空美)の、一人の男をめぐる壮絶な「女の戦い」を官能描写満載で描く。
ダンスのテクニックも、女としての色気も圧倒的な姉に対し、恋愛経験ゼロの清楚な妹が、一人の彫師により魔性を呼び覚まされる展開が見所。
個人的に気になっていたダンスシーンは、実際に社交ダンス選手権に挑戦した事のあるさとう珠緒が、もちろん上手に踊るわけだが、あえて井村空美の引き立て役に見えるような撮り方がなされている。微妙にカメラ位置が高い引き絵で、スタイルがドンづまりに見える等々。そうした演出意図はわからぬでもないが、もう少しダイナミックな見せ場にしていただきたかったというのが正直なところ。
とはいえ、さとう珠緒の演技自体には相当な迫力があり、あの童顔と声で彼氏に「あたしを捨てるなんて許さないから!」と叫ぶ場面の恐怖感といったらない。タカビーなくせに異様なやきもち焼きという、彼女のイメージにぴったりな役柄で、何度も笑わせてもらった。
彼女の生々しいあえぎ声が色っぽい濡れ場の数々を楽しんだ後、肝心の井村空美さんの裸タイムは開始後1時間ほど経ってから。
生肌の肩、うなじ、背中、お尻の割れ目まで、小出しにされるそれは、女性監督・三島有紀子の、初メガホンとは思えぬ老練なじらし演出により、極限まで期待を高められた後、ついに観客の目にさらされる。皆さんの見たいものはすべて見られるので、安心して1800円を握り締め、映画館に出かけて欲しい。
個人的には刺青よりも、何も描いてない身体を見たいわけだが、彫ることで様々な面白演出が可能になるのが、このシリーズ(いや正確にはシリーズじゃないが)のポイント。
初めて針を入れられる瞬間の表情は、まさに別のモノに貫かれるときのそれだし、彫り終わって脱力するように崩れ落ちる背中は、後ろから攻め終わった直後に見える。というか、それを狙っているからこの原作が好まれるわけであり……。
いずれにせよ、井村空美の頑張りは特筆に価する。それさえあれば、もう何もいらない、か。