『築城せよ!』55点(100点満点中)
2009年6月20日(土)より、新宿ピカデリー他にてロードショー 2009年/日本/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーSR/120分 配給:東京テアトル
監督・脚本: 古波津陽 脚本: 浜頭仁史 主題歌:多和田えみ「時の空」(techesko) 出演:岡愛之助 海老瀬はな 阿藤快 江守徹 藤田朋子

ダンボールでお城を作ってしまうとは

古波津陽(こはつよう)監督が、わずか300万円で作った本作のオリジナルは、意外なことにアメリカ(サンフェルナンドバレー国際映画祭)で高く評価された。そこで、もっとお金をかければよくなるはず、と考えた日本のプロデューサーの尽力により、このたび製作費3億円でリメイクされることになった。まさに、映画界のわらしべ長者である。

ある町の過疎化対策で、二派が対立していた。城跡に戦国の城を再建して観光名所にしようとする勢力と、工場誘致を唱える一派。そんなとき、遺跡から戦国武将の霊が復活、さえない公務員(片岡愛之助・2役)に乗り移る。城を完成できなかった無念をはらしたいと語る武将は、なんと住民らに「築城せよ」と命じるのだった。

その異様な風貌に半ば気おされ、大学で建築を学ぶ女子学生ナツキ(海老瀬はな)をリーダーに、住民たちの築城計画が開始。だが、さまざまな困難を前に彼らが出した結論は「ダンボールで城をつくること」だった。

いま、あらゆる町で失われつつある地域住民の団結や歴史の大切さ、そしてものづくりの精神。そんな骨太なテーマを織り込んだ、異色のエンタテイメント。そうした監督の意欲は、主人公が完成した城について語る感動的な台詞に表されている。

ただ、経験不足からと思しきつくりの荒っぽさは否めない。たとえば、本作最大の見所となる紙の城は、地元大学生らの協力で作られた、とても素晴らしい出来栄えのセットである(もちろん、本当に段ボールだけで作られているわけではない)。

が、それがあまりに出来がいいために、逆に「こんなもん作るのムリだろ」感が大いに漂っている。ダンボールでも強度は問題ないという実験結果をもって脚本を仕上げたというのにもったいない話だ。

これを防ぐためには、設計から完成までの間に、いくつもの建築雑学を観客に提示する必要があった。不可能と思われるものを、いかにして可能にせしめたのか。それをきっちり描くことに力を入れればよかったのだ。

うまくやれば、素人の観客に対して知的興奮を呼び起こすことも出来る。というか、それこそがこの題材から人々が第一に望むものであろう。本作にはそれが足りない。

「地域振興」やら「ものづくり精神」など、先ほど書いたその他のテーマなどは、この背骨部分ががっしりとできてからの話で、屋台骨がしっかりしているほど、そうした装飾的主題も生きてくるというもの。意欲は素晴らしいが、あと一歩、であった。

また、築城開始まで上映開始後45分もかかっているのは、いかにもテンポが悪い。このあたりも改善を望みたい。

逆にほめたいのは、片岡愛之助の堂々たる風格。ダメ公務員と戦国武将を見事に演じわけ、このファンタジーにそれなりの説得力を持たせた。彼がよく通る声で「築城せよ!」と叫ぶと、なんだかみんな動き始めてしまいそうな迫力がある。

ヒロインの海老瀬はなは、松竹のオーディションでグランプリを受賞した期待の若手女優。大学生役らしいナチュラルな魅力を振りまくが、実物はさらにスラリとした今風の美人である。

それにしても、東京では段ボールで家を作るのはホームレスくらいだが、それをお城の材料にするとは。なんとも、映画的で夢のある話だ。



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