『ターミネーター4』70点(100点満点中)
Terminator Salvation: The Future Begins 2009年6月13日(土)より、丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/114分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:マックG 脚本:マイケル・フェリス、ジョン・ブランカトー 音楽:ダニー・エルフマン 出演:クリスチャン・ベイル サム・ワーシングトン アントン・イェルチン ムーン・ブラッドグッド
シュワちゃん登場シーンの盛り上がりがすごい
2作目の公開後、制作会社の倒産による権利関係のトラブルがようやく沈静化し、待望の新章の幕開けとなった「ターミネーター」。シュワちゃん大活躍のT3や、女子高生ターミネーターが登場するテレビ版に続き、製作費190億円超の超大作として、いよいよこの映画版4作目が公開となる。(ここから先は脳内にテーマ曲を流しつつお楽しみください)
2018年、核戦争で荒廃した地上では、機械と人類の壮絶な戦いが繰り広げられていた。機械軍「スカイネット」は、T-600など強力なターミネーターを野に放ち、生き残った人類を狩り続けていた。レジスタンスの小部隊を率いるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)は、総司令官と対立しつつも、運命に導かれるように人々の支持を集めていた。
超話題作として期待されていた本作だが、米国ではまさかの初登場2位。コメディ映画「ナイトミュージアム2」に敗北を喫し、翌週には4位にまで転落した。
このサイトで何度も書いているとおり、いまのアメリカのトレンド「陽気/ネアカ」と対立するこうした暗い映画は、たとえターミネーターであっても苦戦を強いられる。だいたい、自分たちの預金口座が焼け野原になってるような状況で、荒れ果てた地球の話なんて好き好んで見るものではなかろう。彼らにとっては、人類よりも自分たちの国がヤバイのである。お笑いやディズニーアニメに人が流れるのは、必然であろう。
さて、肝心の映画のできだが、これはすばらしい。タイトルに「ターミネーター」がついていなければ、の話だが。
これが例えば「トランスフォーマー」なんて題名であったなら許せるが、正直なところ、ターミネーターらしさという点では不合格に近い。
何が足りないかといえば、「熱さ」が足りない。たとえば、シリーズ最高傑作の2作目において、廊下で2体のターミネーターに挟まれた若きジョン・コナー。誰もが絶体絶命だ! と思ったその後に起こる一連のアクションシークエンスを思い出してほしい。
あの時観客が感じたのは、「特撮がすごい」とか「金がかかってるねー」ではなく、背筋が震えるような熱さ、だったはずだ。つまるところ、ジェームズ・キャメロンが作り上げたこのシリーズの魅力とは、そこにあるわけで、個人的にはそれをいかに踏襲できるかに注目していたが、残念ながらそれは叶わなかった。
マックG監督は、新しいチャーリーズエンジェルシリーズで知られるとおり、ど派手映像請負人だから、確かにアクションの組み立て、膨大な火薬量にVFXを絡めた見せ方の上手さは文句なし。冒頭の、A-10爆撃機飛び交う突撃シーンの映像などは、十二分に入場料の元を取れたと感じるほどの出来栄えだ。
だが、器用さよりも(たとえ不器用であろうと)情熱を感じたいというのは、贅沢な要望であろうか。
具体例を挙げれば、後半に配置されるT-800と主人公の絡みについて。本作はT2の世界観を受け継いでいるのだから、ジョン・コナーがT-800に対し、何がしかの感情的対応を見せるか、またはT2自体を伏線とした戦法を見せるくらいは、観客の誰もが期待するところ。しかし実際はどうだったろう。
また、脚本、というか設定上にいくつか疑問符がつく部分もある。この時代にそれは無いんじゃねーの、ってやつだ。
それでも、唯一盛り返したのはやはりアーノルド・シュワルツェネッガーの登場シーン。結局、この顔が出ればすべてを持っていってしまう。強烈なカリスマである。
結論として、多少の不満は残るが、決してダメということはない。期待度の異常な高さのわりには、よく頑張った、といったところ。多くのファンが、それなりに楽しむことができるだろう。