『ROOKIES -卒業-』70点(100点満点中)
2009年5月30日(土)より、全国東宝系ロードショー 2009年/日本/カラー/137分/配給:東宝
監督:平川雄一朗 原作:森田まさのり「ROOKIES」(集英社刊) 脚本:いずみ吉紘 出演:佐藤隆太 市原隼人 小出恵介 城田優 高岡蒼甫
無用なほどに熱い男の野球ドラマ
森田まさのりによる原作の野球漫画も、そのドラマ版も私は見ていない。どう考えても置いていかれるに違いないと思いつつの鑑賞だったが、これが意外なほど面白い。チョイワル男たちの熱いドラマを、私はすっかり気に入ってしまった。
ニコガク(二子玉川学園高校)野球部の面々も3年生となり、いよいよ甲子園への最後の挑戦が始まった。熱血教師・
平川雄一朗監督は撮影前、脚本を読みながら号泣。キャストの面々もクランクアップが近づくにつれ大泣きしたそうだ。撮るほうも撮られるほうもオイオイ泣きながら作っているという、想像すると笑ってしまいそうな話だが、なるほどたしかに画面からは熱い何かを感じられる。世間体など気にせず、やりたい道へ突き進む人間だけが持つ潔さとでもいおうか、どこか爽やかな空気が漂っている。
効果的だったのは、たっぷりとられた上映時間(137分)。これは、シリーズの締めとして、やるべき事、やりたい事を全部やりつくそうというスタッフたちの意気込みを、余裕を持って実現できるだけの尺であった。
また、意外なほど上手い若手俳優たちの貢献度にも言及する必要があるだろう。長髪や茶髪に荒っぽい言葉遣い──外見はとても高校球児には見えないが、そこがいい。こういうヤツらが活躍するのを見られるならば、きっと私もNHKの中継を見るだろう。ワガママ新人の赤星も、じつに魅力的なキャラクターだ。
ほぼ全員に見せ場があり、まるで10分おきに感動のクライマックスが訪れるような展開は、映画作品としての完成度など度外視した、観客サービス優先の構成。こういう映画はこれでいい。
野球シーンは、技術的にはまだまだな面もあるが、試合展開はよく工夫されている。バットのグリップににじんだ血がアップになる所などは、屈指の名場面であろう。
試合終了後も、涙涙のドラマは続く。なんとも、憎めない青春ドラマだ。