『セブンティーン・アゲイン』85点(100点満点中)
17 again 2009年5月16日(土)より、新宿ピカデリー他全国にてロードショー 2009年/アメリカ/カラー/102分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:バー・スティアーズ 脚本:ジェイソン・フィラルディ 出演:ザック・エフロン、レスリー・マン、トーマス・レノン、ミシェル・トラクテンバーグ、スターリング・ナイト

じつは最高のファミリー向けムービー

「若いころに戻ってやりなおしたい」とは、12歳から90歳まで、それこそオールエイジの共感を得られるテーマである。たとえ相手が小学生だって、「過去に戻れるなら、いつに戻ってみたい?」と聞けば、大いに盛り上がることは間違いない。それが人間というものだ。

さえない中年マイク(マシュー・ペリー)は、自社製品であるED治療薬のプロジェクト会議で、またもろくでもない目にあい、落ち込んでいた。女子高生の娘(ミシェル・トラクテンバーグ)にはバカにされ、息子の尊敬も得られない。何より大恋愛の末結ばれた妻(レスリー・マン)との関係が、破綻寸前に陥っていた。そんなある日、母校を訪れたマイクは怪しげな用務員の力により、17歳当時の姿(ザック・エフロン)へと変身してしまう。

この話の面白いところは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように実際に"過去に戻る"のではなく、主人公の"外見だけが17歳になる"という設定。

すなわち、大人のマイクは行方不明扱いとなり、代わりに超イケメンのスポーツマン17歳が登場する。身元保証や転入手続きは、映画的説得力のある設定で軽くクリアし、「娘や息子のいる高校に、17歳当時の肉体を持つ父親がやってくる」ワンアイデアに観客を集中させる。

さて、その若き父親はそこで何をするのか。彼が後悔し続けている高校時代のある選択について、どうやりなおしていくのか。離婚協議中の妻(30代後半)と若い姿で再会したとき、彼はそこに何を見つけ、どう応対するのか。

ありとあらゆる「私だったらこうする、こうしたい!」が次々登場し、ザック・エフロン演じる主人公が実行していく。気になる周囲の反応、それから主人公の行く末は予想通りだったり意外だったり、まったく飽きさせない。すべてがキレ良く、明るい笑いで演出され、とにかく楽しくて仕方がない。

父親たる主人公が実際に学校内に入ることで、これまで知らなかった娘や息子たちの本音、苦悩を知るくだりもいい。笑いの中にいくつもの涙が練りこまれ、総合的満足度も二乗三乗と増えてゆく。クライマックスのバスケットボールの試合周辺の流れは、まさにハリウッドムービーの王道ともいうべき感動的な演出で飾られる。

昨年から今年にかけて、あきらかに潮流が変わったアメリカ映画界を象徴する、幸せいっぱいの作品。ウジウジ君が悩み続ける話より、こういう洋画を見たかったんだ! という人は数多いはずだ。そうした声にこたえるネアカな作品は、これから間違いなく増えてくる。個人的にも大きな期待を抱いている。

17歳時の主人公役ザック・エフロンは、日本じゃまだ海外ドラマ&映画ファン限定の人気だが、米国では国民的といってもよい若手トップスター。自信は人の魅力をアップさせる法則どおり、一寸の迷いもないその佇まいからは、王者の風格さえ漂う。これを見た女性の9割くらいは完全に魅了され、翌日から熱心な追っかけになることだろう。

そもそも、話の設定に隙がない。この話を彼がやれば、そりゃ完璧だわと言いたくなる。

たとえばまず、若きイケメンが熟女にアタックする展開は、世の奥様にはたまらない理想郷。

次に、ザック・エフロンファンの若い娘っ子たちにとっては、彼出ずっぱりの本作の良さは言うに及ばず。

一方、オジサンたちが見ても、「女子高生に今の知恵をもったままアタックできる」状況のシミュレーションは、この上ない魅力だろう。これがもし「主人公が過去に戻る」話だったら、「若き日の妻に再会する」という、あまり嬉しくないストーリーになるだけであり、魅力半減だ。

つまり、この一種ひねった設定のおかげで、「一家3人がそろってニコニコ楽しめる」という、商売上も完璧な布陣になったのである。私としても、いま、父母娘の3人で見る映画は、これしかないと太鼓判を押す。

あるいは、マンネリ期を迎えた夫婦で見るにもいいかもしれない。映画があまりに良くできているがため、素晴らしいラストシーンのノリを維持することができれば「オレも今夜は古女房をかまってやるか」との気分になれること間違いない。

それは、この世の安定のためには、まことに好ましい状況である。

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ザック・エフロンといえばまずはこれか。
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ヒロインといい仲になる男の子を演じてます。ちょっとクールな感じ。でもやっぱり一番いいのは『セブンティーン・アゲイン』の彼かな、と思いますが。


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