『テラー トレイン』70点(100点満点中)
Train 2009年5月2日(土)GW、銀座シネパトスほか全国順次ロードショー 2009/アメリカ/カラー/ヴィスタサイズ/SRD/上映時間:1時間34分 配給:ムービーアイ R-15
監督/脚本:ギデオン・ラフ 出演:ゾーラ・バーチ、ギデオン・エメリー、ケイヴァン・リース、デレック・マギヤー
まさに「地獄の車窓から──」
80年の同名サスペンスのリメイクとなる本作は、その内容を大きく変え、電車ファンを凍りつかせるスプラッターホラーとして蘇った。
国際大会出場のためリトアニアに遠征中の、インディアナ大レスリング部の面々。アレックス(ゾーラ・バーチ)や部員たちは、男女連れ立って街でハメをはずしまくり、翌朝の列車に乗り遅れてしまう。言葉も通じず途方にくれていたところ、親切な現地女性がやってきて乗るべき列車を教えてくれた。
外国で親切に寄ってくるヤツにろくなのはいない、ということで、哀れな体育系大学生たちは殺人列車の旅を満喫する羽目になる。
安宿の宿泊者が拷問ハウスへ送られる「ホステル」シリーズを髣髴とさせる恐怖映画で、妙なリアリティがあるから、海外を一人旅する人は鑑賞要注意。「東欧なら、これくらいの事件が起きても不思議じゃない」という、私たちのとんでもない偏見を利用した、ステキなホラー作品といえる。
じっさい本作は、東欧でおきている事件(もちろん映画とはだいぶ違うが)をヒントに、電車内密室ドラマとして企画されたもの。ブルガリアの、本物の鉄道車両内で撮影できたおかげで、低予算ながら実感伴う映像が実現した。
冒頭、ナイスバディの裸の子の映像から始まるが、その直後、私たちのささやかなスケベ心を打ち砕く強烈な描写が襲い掛かる。
ここに限らず、劇中の残酷描写はかなりのもの。私はこれを紹介しようとして、テレビ局のプロデューサーに「これは放送できない」と泣きつかれた。私としてはそれほどとは感じていなかったのだが、感覚がマヒしている証拠であろう。
思えば少年時代、おそるおそる見た「食人族」(81年、イタリア)のビデオを、友人の父親はから揚げをたべながら平然と見ていたと聞いて、その豪胆さに感動したものだが、最近は自分がその域に達しつつあるような気がしてならない。本作品にも、おめめスプーンなど様々な見所(?)があるが、皆さんはどうお感じになるだろう。
犯人たちの目的がなかなか明らかにならないドキドキ展開、さらに終盤には壮絶なサバイバルバトルがあるなど、人々がホラーやサスペンスに求める本能的快楽は十分に満たしてくれる。内臓えぐりだし場面などは画面が真っ黒に近いほどに暗く、モニターによっては見ずらいだろうからその点でも映画館向き。
美女に肉の注射をしようとしたら、逆にあぶない薬を注射されていつの間にか自分のおなかが解体中。そんなシュールな恐怖を味わいたい人にとっては、なかなかの掘り出し物となるだろう。