『トワイライト〜初恋〜』75点(100点満点中)
TWILIGHT 2009年4月4日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/122分/配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント
監督:キャサリン・ハードウィック 脚本:メリッサ・ローゼンバーグ 出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、ビリー・バーク、アシュレイ・グリーン

ティーン向け恋愛映画がこれほどの高品質とは

米大手ワーナーブラザーズは、翌夏強化のため08年冬公開予定だった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を温存、金庫の奥深くにしまいこんだ。

その代わりに前倒しで公開されたのが、同じ英国のベストセラー小説『トワイライト』の映画化である本作。原作同様、10代の女の子の胸をときめかせるイケメン揃いの実写化だが、これが予想を上回る特大ヒット。捨て試合で思わぬ勝利を得たWBC2次ラウンド日韓戦の日本チームのような、旨みある興行となった。

アリゾナから越してきたベラ・スワン(クリステン・スチュワート)は、転校先の高校になじめずにいた。そんな彼女の気を引いたのが、地元クラスメートさえ近寄りがたい様子の寡黙な美少年エドワード・カレン(ロバート・パティンソン)。そしてある日、事故に巻き込まれたベラは、エドワードに人間離れしたパワーで救けられる。

徹頭徹尾女の子向けの、ファンタジック・ラブストーリー。若い女の子というものは、障害ある恋に燃える生き物であるが、この場合は男子の正体が人外の化け物という設定がそれにあたる。

だが、捨て身で命を救われ、誠実に家族を紹介され、ベラちゃんはあっさり恋に落ちる。ここから得られる教訓としては、イケメンなら化け物でもモテる、ということだ。

考えてみれば、森を飛び回るほど強靭な肉体、美しい顔、おまけに長生き(不老不死)。自制心が強く、安易に女の子に手を出すこともない。性欲に負けて狼になる人間の若者より、こっちのほうがずっといい。というか、読者の女の子にしてみれば、これぞ理想の彼氏像そのものだ。

だが、そもそもエドワード君の種族は、人間を食って生きるモンスターだ。もっとも、その種族の中にもいくつかあり、エドワードくんが属するカレン家の場合は人間界で生きるため、さっさとベジタリアン化した温厚な一派。そのおかげで、本来は食料であるベラちゃんとラブラブにもなれた。

われわれ人間であれば、いくらベジタリアンでも、牛肉に恋することはないが、なにしろベラちゃんはエドワード君に負けないほどの超美少女。要はここでも件の教訓が生きている、ということか。

この美男美女に加え、脇役陣も魅力的。人間界に紛れ込んだ化け物種族と、なにやら関わりがありそうなインディアン親友の存在は、パート2以降に動き出しそうな大きな背景を予感させる。また、ベラの友人の巨乳メガネっ子も感じがいい。こちらは私の勝手な好みである。いずれにせよ、キャラクターがしっかりしているから、このまま連続ドラマにしても成立しそうだ。

舞台となる街にも、シリアスでいいムードがある。雨と霧に包まれた架空の街という設定で、一年中梅雨のようなどんよりとした雰囲気は、このファンタジックな恋物語の舞台装置としてはぴったり。純粋に映像としても美しく、映画館の大画面で見れば一気に魅了されよう。

ワイヤーワークを多用したアクションも、抑制が効いており先述した重厚な映像世界を壊していない。ここ1年ほどの作品、とくにアメリカ映画では、このワイヤーの使い方がずいぶん上手になってきた。一歩間違えばお馬鹿になりがちな非現実的な場面でさえ、興ざめすることはない。

こうした特撮を使った激しい戦闘スタントに備え、エドワードを演じるロバート・パティンソンは一日5時間ものハードトレーニングを積んだという。

彼は、この役を5000人参加のオーディションで勝ち取った。つまり、5000人の並イケメンの中から選ばれた、スーパーイケメンである。おまけにまじめに努力もしているとなれば、もはや誰もかなうはずがない。さすがの米国の女の子たちも、メロメロになって当然だ。

日本の女の子も、デートで連れて行かれる男の子も、ハリウッド映画らしい映像美にうっとりできる事うけあい。もっとも、スクリーンの中の登場人物と、お連れ合いのお顔を見比べるのだけは自重すべきであろう。

トワイライト〈1〉 愛した人はヴァンパイア
文庫版も出ていますが、こちらの表紙の方がいかにも、って感じ。
ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
読んでびっくり。食料に恋する有名なお話。


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