『DRAGONBALL EVOLUTION』55点(100点満点中)
DRAGONBALL EVOLUTION 2009年3月13日(金)より、日劇1他、全国超拡大ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/87分/配給:20世紀フォックス映画
監督:ジェームズ・ウォン 製作総指揮:鳥山明 製作:チャウ・シンチー 脚本:ベン・ラムジー 出演:ジャスティン・チャットウィン(孫悟空)、エミー・ロッサム、チョウ・ユンファ、ジェームズ・マースターズ、田村英里子
普通すぎてガッカリ
ここ数週間の興行予定をみると、「ヤッターマン」「釣りキチ三平」「昴」そして今週末のドラゴンボールと、春休みらしいコミック、アニメの実写化作品が百花繚乱の様相を呈している。
どれもこれも、よくまあ企画が通ったなと感心せざるをえない微妙なラインナップだが、中でももっとも期待されているのはこの『DRAGONBALL EVOLUTION』ではないだろうか。誰に? もちろん、ダメ映画フリークに、だ。
祖父の悟飯(ランダル・ダク・キム)からドラゴンボールのひとつを受け取った高校生・孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)。世界を滅ぼすピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)の復活を受け、彼は出会ったばかりの発明好きの女の子ブルマ(エミー・ロッサム)と共に、他の六つのボールと鍵を握る亀仙人(チョウ・ユンファ)を探す旅に出る。
悟空がいじめられっこの高校生だったり、キャストの写真があまりにイメージとかけ離れていたため、製作者は原作を読んでないんじゃないか、との心配が、決定当初はなされていた。
ところが出来上がってみれば、意外にも原作漫画を熱心に読み込んだ風で、かなり細かい要素まで取り込んでいるのがわかる。確かに変な部分もあるが、事前の予想からすれば微々たる物。ストーリーも映画オリジナルだが、どうみてもこれは『ドラゴンボール』である。
逆に、原作を読んだ人にとっては、あまりにもサラリとしたのど越し=展開で拍子抜け。行き返りの山手線の車窓の風景のほうが、よっぽど意外性に富んでいる。これでは普通のハリウッドアクションムービーではないか。
私たちは、そんなものを期待していたのではないはずだ。ハリウッド映画で日本人といえば、現代劇でもチョンマゲが当然。看板は中国語で書かれ、中国系アメリカ人がインチキな日本語を話してこそ、世界に冠たるハリウッドムービーだ。
それがこの作品ときたらどうだ。よもやこんなに綺麗にまとまった、平凡なアクション映画になるなんて。前代未聞のトンデモ作品を数年間、恋焦がれて待ち続けた日本のファンは、いったいどう反応したらいいのか。人々の期待にこたえるのが、ハリウッドの特技ではなかったのか。7つの玉を集めて龍を呼び出し、ピッコロと戦うだなんて、これではまるで『ドラゴンボール』ではないか。
──と、マジメに作ったジェームズ・ウォン監督が聞いたら泣きが入りそうな理不尽な感想を述べたところで、冷静に見所を紹介するとしよう。
まず、事前にきっちりトレーニングを積んだ主人公のアクションは、なかなかキレがある。水滴の変形まで見えるスローモーションを効果的に使い、逆にスピード感を感じさせる演出などは地味だが上手い。
他のキャストの中では、田村英里子がピッコロのパシリとして大活躍。なにぶん大魔王ピッコロ一味は2000年間も休業していたので人材不足。大魔王の部下は彼女しかいない。たった二人で世界征服を狙うとは、見上げたベンチャー精神である。
日本で田村英里子といえば、かつて半ケツカレンダーでアイドルファンを驚かせた逸材だが、本作では胸の谷間担当として、尻ならぬ半ムネを惜しげもなく露出。ハリウッドスターになっても、変わらぬ魅力を振りまいてくれる。
一方、もう一人の日本人女優として名が上がっていた関めぐみは、どう見ても後から設定ごとカットされたとしか思えぬ、チョイ役扱いとなってしまっており気の毒であった。
『DRAGONBALL EVOLUTION』は、日本が一番早い公開とあって、フィルムの到着が通常より遅れた。その結果、マスコミ関係者もほとんど事前に見ることができず、中身不明のまま先行公開を迎えた。
結果的にはそれは成功だったという気がする。中身が安ピカ品だとわかってしまった福袋なんて、誰も買わないだろうから。