『ジェネラル・ルージュの凱旋』60点(100点満点中)
2009年3月7日(土)より、全国東宝系ロードショー 2009年/日本/カラー/123分/配給:東宝
監督:中村義洋 原作:海堂尊 出演:竹内結子、阿部寛、堺雅人、高嶋政伸、國村隼

専門家お墨付きの医療シーンが見所

『チーム・バチスタの栄光』の続編となる本作は、前作と同じ監督、同じメインキャスト、同じムードの作品として作られた。海堂尊の原作では男であるはずの狂言回しのキャラクターを、竹内結子に変更することで、でこぼこ男女ペアの楽しい謎解きモノにした点も、もちろん変わっていない。

だが、このコンセプトが2作目では完全に裏目に出た。

チーム・バチスタの事件から立ち直りつつある東城大学付属病院で、再び事件がおきた。ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)の異名をとる救命救急センター長の速水(堺雅人)が、医療メーカーと癒着し、多額の金銭を享受しているとの内部告発があったのだ。無理やり倫理委員会の委員長に任命されていた女医・田口(竹内結子)は、偶然にもケガで運ばれてきた厚生省の切れ者官僚・白鳥(阿部寛)と共に、再び院内の調査に当たるハメになるのだった。

竹内&阿部による、ちぐはぐなやり取りが魅力の映画版は、同時にそれが短所でもある。事件の真実が、大きな感動と強い問題提起を伴うタイプの社会派ものだけに、このライト感覚にはどうしてもそぐわないのだ。

この手の人間ドラマは、いかに観客の心を揺り動かせるか、熱い主張を込められるかかが勝負だが、このシリーズにはそれが無い。中村義洋監督は、最近人気ミステリの映画化をよく引き受けているようだが、この人にはむしろ、トリッキーな犯人当てゲーム系、すなわちパズラーのような原作が向くのではないか。

作りは堅実で、とっぴな演出も無い。その点、うまいことはうまいのだが、その分なんだか頭で作ったような冷たい印象を受ける。だがこの物語には、そんな小手先のテクニックよりも熱意こそが必要だ。でなければ、もっとも大事な犯人の心を描くことができない。

竹内結子は、見るたびに若返っていくかのような可愛らしさにくわえ、抜群の演技力を持つ女優だが、今回ばかりは上滑りしている。キャラを作りすぎで、無感情なヘンな女にしか見えない。ここは本来、監督が抑制してやらねばならないところだ。

彼女が唯一感情を吐露する、クライマックスの戦場のような救急現場で叫ぶセリフも、こちらの心に届かない。今頃キミはなにいってんの、と冷めてしまう。

最大の見せ場となるこの救急シーンについても、その直前の犯人解明場面の演出があまりに非現実的かつ演劇的にすぎたため、ご都合主義を感じる結果となり感動を得にくい。

本来ならここは泣ける場面だろうなぁ……と感じる局面が多々あるが、そんなわけであと一歩、涙腺に届かない。原作を読んでいない人ならば、「ああこの場面は、きっと原作だったらすげえいいトコなんだろうなぁ」と、若干の悔しさを感じることだろう。

医療関係者がつきっきりで監修しただけあって、手術シーンなどの本物感はなかなかのもの。こだわったのは、医師が実際につかう言い回しを実際に採用したこと。道具立てよりも、演じる人物がリアルであることの方が大切だとよくわかる。

全体としては、決して悪くは無い……どころか、面白く見られること自体は間違いないのだが、もっともっとよくできたはず。その思いを捨て切れない以上、ここは60点ということにしておきたい。

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)
下巻はこちら。ちなみにこれはシリーズ3作目なので、チームバチスタのあとにはナイチンゲールの沈黙(上)(下)を先に読んだほうがいいかも。


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