『激情版 エリートヤンキー三郎』40点(100点満点中)
2009年2月28日(土)より、新宿バルト9他にて全国ロードショー 2009年/日本/カラー/106分/配給:東映
監督:山口雄大 原作:阿部秀司(講談社「ヤングマガジン」連載) 脚本:木田紀生 出演:石黒英雄、
山本ひかる、板倉俊之(インパルス)
流行中のヤンキー映画の中でも最凶?!
ヤンキーの巣窟として悪名高い徳丸学園高校に、大河内三郎(石黒英雄)が入学してきた。本当はゲーム好きの気弱な少年である三郎は、しかし徳丸史上最悪といわれる凶暴な一郎(小沢仁志)、二郎(小沢和義)の弟ということで、名うてのヤンキーたちから狙われるのであった。だが三郎の実力(?)に目をつけた策略家・河井星矢(板倉俊之)は、三郎を頭に軍団を組織し、石井武(橋本じゅん)ら武闘派を一気に取り込んでしまうのだった。
07年に放映されたテレビドラマ版と、ほぼ同じキャストによる映画版。ただしヒロインの春菜役は変更となっている(正確には別キャラだが)。阿部秀司の原作漫画の勢いをよく再現した、各人の役作りが見所だ。見た目はそれほど似せてはいないものの、どのメインキャラも期待以上の面白さ。とくに星矢のインチキぶりと、石井のバカっぷりには、映画版でも大いに笑わせてもらった。
映画はオリジナルストーリーということで、竹内力が異様に目立ちまくる。このあたりは賛否両論といったところか。個人的には、後半のホラー風味付けはいらないから、あくまでヤンキー映画の範疇でめちゃくちゃをやってほしかったところ。
そもそも山口監督は、どうもやりすぎというか、テンションを無理矢理に高めようとする点が見ていて痛々しい。笑える部分は多々あれど、それ以上に外しすぎ。もっと力を抜いて、作品との距離をとって作ったら、なお良くなるはずだ。
笑いというのは、ボクシングと似たところがある。パンチをはずせばスタミナは消耗する。つまりギャグをはずすことは、ゼロではなくマイナスなのだと、ギャグ映画の監督はもっと認識する必要がある。客を1回笑わせても、1回外せば満足度はプラマイゼロ、下手すればマイナスだ。だからパンチを繰り出す際は狙いすまして、ジャブを打つのかストレートを打つのか計算した上で、打ち込んでほしい。
山口監督の場合は、毎回大振りでしかも空振りが多く、見ていてつらい。笑いどころも原作から厳選していけばいいのに、結局どんちゃん騒ぎにしてしまう。何でもかんでも三郎のキレ暴走で収めようとするのは、作劇としても単調にすぎる。
とはいえ、幾多のアクションは痛快で楽しい。ややグロい表現も、この監督の持ち味か。チープなCGをガンガン使い、原作の魅力を必死に再現しようとの工夫が感じられる。