『雷神-RAIJIN-』30点(100点満点中)
2009年2月14日(土)より、新宿ミラノ・銀座シネパトスほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/98分/R-15(仮) 字幕翻訳:岡田壮平配給:ムービーアイ
監督:ジェフ・キング 脚本・製作総指揮:スティーヴン・セガール 出演:スティーヴン・セガール、アイザック・ヘイズ、ホリー・エリッサ・ディグナード
マイケル・フィリポウィック
前作から5ヶ月で、早くもセガールの新作登場
この映画の宣伝文句はこうだ。
「その者、黒き銃(はがね)を手にして、非道の地に降り立つべし──」
私は座席に座ってパンフレットを開いた瞬間に、この秀逸なパロディを見せられた。スティーヴン・セガール映画は、すべからくギャグとして楽しむべしといったやり方が、どうやらオフィシャル的にも正解のようである。
女性の胸に時限爆弾を仕込む、前代未聞の事件が発生した。現場に急行したジェイコブ刑事(スティーヴン・セガール)は、その派手な手口から、犯人は必ず近くにいるはずだと推理。爆破時刻が迫る中、ひとりまったく動じずにいた。
冒頭から驚かされる。何にって、セガールのとんでもない爆弾処理方法に、である。アメリカ映画の場合、爆弾処理シーンは爆破3秒前に色分けされたワイヤーを切断する、というルールがおそらく脚本家組合か何かで決まっていると思われるが、本作のアイデアは斬新である。同時に、セガールでなければ説得力を出すことはできないであろう荒業でもある。ファンは必見だ。
ところが、その後がモタモタしていけない。たとえば、セガールがザコ相手にてこずる場面などまるっきり不要だ。むしろ、指一本でふっ飛ばしながら進んでいく爽快感こそが、観客の求めるもの。ジェフ・F・キング監督はセガール映画初登板のせいか、そのあたりがわかっていない。
セガールがトラウマに悩んでいたり、プロファイリングや暗号解読にしこしこ挑戦したりといった、こまごました演出もいらない。いや、上映時間を埋めるために多少あってもいいが、それを問題解決に生かす展開はいらない。
色々がんばりましたが、結局のところは暴力で全部解決いたしました。必死に解いた暗号など、実はまったく不要でございました、という無法な流れこそが、セガール映画の魅力だと私は思う。
ラストのビックリオチなどは、なかなか冗談のわかる監督だと評価したいところだが、まだまだセガール映画を作るには経験不足か。もっとも、脚本はセガール自身によるものだが。
アクションシーンも、細切れにし過ぎて何をやっているんだかさっぱりわからない。もっと合気道の流麗な体さばきを見せないといけない。
前作「弾突 DANTOTSU」の日本公開からたったの5ヶ月で新作が見られるのはうれしいが、次はもう少しネタになる内容のものを作ってほしい。核爆発を体で防ぐとか、そのくらいやっても許されてしまうのが、スティーヴン・セガールなのだから。