『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』75点(100点満点中)
Revolutionary Road 2009年1月24日(土)より、丸の内ピカデリー1他全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/119分/配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
監督・製作:サム・メンデス 原作:リチャード・イエーツ 脚色:ジャスティン・ヘイス 出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャスリーン・ハーン、マイケル・シャノン
「タイタニック」のカップル再び?!
「タイタニック」のカップル、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットは、いまや押しも押されぬ大スター。二人とも演技力もすこぶる高い。だが、役者としての特性は正反対といってよい。
レオナルド・ディカプリオは、これはもう彼の顔をひと目見ただけで万人が愛してしまう、好感度の塊をそのまま顔に配置したような、いわば正のスターだ。
一方ケイト・ウィンスレットはその逆。いやな女、不快な態度を演じさせたら当代随一。いわば負のスターといえる。
個人的な意見を言わせてもらえば、レオの主演作ならとりあえず見たいと思うが、ケイトのそれを見に行くには相当なエネルギーを要する。この正反対の特性をもつ二人の共演は、だからこそ強力だ。おそらくこの二人以上に強く、相互に高めあえる共演関係というのは存在しないのではないか。
1950年代、コネチカット。閑静な新興住宅街に暮らすフランク(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)は、子供にも恵まれ一見幸福そうにみえた。ところがこんな夫婦でも、その内情はガタガタ。女優志望だった自分の現状にも、かつてもっと上り詰めることを信じて疑わずにいた夫の現状にも、エイプリルは不満だった。そんな彼女に煽られ、フランクもとうとう安定した現在の暮らしを捨て去る決意をするが、そこに突如、栄転の話が舞い込み……。
日常にありがちな「人生うまくいかねえなぁ」を上手に描き、人生の真理を垣間見せる。サム・メンデス監督の巧みな手腕は、愛妻ケイト・ウィンスレットをヒロインに迎え、絶好調といったところ。
この役でアカデミー賞を取るのではと噂されるケイト・ウィンスレットは、病的なまでに「幸せ探し症候群」にとらわれた妻を好演。ディカプリオが本気で気の毒になるほどのイカレ具合を見せ付ける。
彼らの見ごたえあるドラマが伝えようとする、「真実」の扱いが味わい深い。「真実が大事」とのたまう妻に、ディカプリオがバカ正直に伝える「真実」。それが引き金となり、事態はとんでもない方向へと転がっていく。そしてラストシーン、そんな二人をあざ笑うかのごとく、「真実」の扱いに長けたある人物がとる行動……。まさにそのとおりと快哉を叫びたくなる、人生の「真実」だ。
この映画を見ていると、登場人物たちの信仰心のなさも目立つ。自分の人生には何か特別なものがあると信じて疑わない彼らは、みるからに傲慢。だが、この世に特別な人間などいない。そんな発想は神への冒涜であろう。
それにしても、レオナルド・ディカプリオが狼狽する終盤の演技には唸らされた。ケイト・ウィンスレットばかりが褒められているような昨今の風潮だが、ディカプリオこそ、主演男優賞にふさわしい活躍ぶりといえるのではなかろうか。