『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』50点(100点満点中)
Disaster Movie 2009年1月10日、新宿ピカデリー他全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/88分/配給:アルバトロス・フィルム
監督・脚本・製作:ジェイソン・フリードバーグ、アーロン・セルツァー 出演:マット・ランター、ヴァネッサ・ミニーロ、ゲイリー・G・サング・ジョンソン

パニック超大作の数々を、突っ込み不在でボケ倒しまくるパロディムービー

ハリウッド超大作のパロディ映画は、アメリカの若者にある程度のニーズがあるので途絶えることがな い。「鉄板英雄伝説」(07年)に続くジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー監督作品 『ディザスター・ムービー!おバカは地球を救う』も、同系統のギャグ映画だ。今回はタイトルどおり ディザスター、いわゆるパニック映画を土台にしたストーリーが展開する。

主人公ウィル(マット・ランター)が見た悪夢通り、地上に大災害が降りかかった。竜巻や隕石、そしてNY中が凍りつくほどの吹雪。秘宝クリスタル・スカルがこの大災害を止める鍵と知ったウィルらは、早速その祭壇に向かう。

元ネタを知らないとまったく楽しめないのでいくつか挙げておくと、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」「ナイト・ミュージアム」あたりはストーリーのベースとして。その他小ネタも含むものとして、「魔法にかけられて」「ダークナイト」「ハンコック」「ウォンテッド」「アイアンマン」「カンフー・パンダ」等々。まだ日本で公開前の「ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」なども含まれる。

個人的にツボに入ったのは、ティーンの妊娠を描き米国で社会現象にもなった「JUNO」のパロディ。あの映画の中でヒロインと彼氏がデュエットする「Anyone Else But You」という曲の替え歌を歌うわけだが、その歌詞の非道ぶりに大笑した。

ここでジュノ(の偽者)を演じるクリスタ・フラナガンは、主要メンバーとしてその後も冒険に参加するが、そのジュノっぷりは出るたびに笑ってしまうほど。エレン・ペイジ(本物のジュノを演じた女優)の演技の特徴をよくつかんでおり、台詞の言い回しや眉間にしわよせる表情等、大げさな再現ぶりがとてもいい。

ディズニーのセルフパロディ「魔法にかけられて」(07)をさらにド下品にパロディにするのも予想通り。ディズニー作品はほかにも確実にメイン扱いで狙い撃ちされており苦笑する。

逆に上手くないと思うのは、元作品の設定をまったく絡めない単なるおふざけレベルのギャグの数々。たとえばジュノと「セックス・アンド・ザ・シティ」のメンバーがカンフーで戦うとか、そんなもんどこが面白いのかと思う。「SATC」の熟女スイーツ軍団を出すなら、ほかにいくらでもいじりようがあると思うのだが。

スイーツで思い出したが、日本語字幕も一部ぶっとんでおり、2ちゃんねる発祥のアスキーアートまで出てきたのには驚いた。ここまでくると、世も末という感じがする。

また、米国の芸能ゴシップネタがかなり長い時間を占有しているので、日本人客の多くは疎外感を感じるかもしれない。

たとえば、死にかけている自称ハンナ・モンタナが、下着姿がうんぬんとのたまう延々と続く場面などがそのひとつ。

これはテレビドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』で主人公を演じるマイリー・サイラスというタレントをおちょくっているのである。低年齢アイドルが跋扈する最近のアメリカ芸能界でも特に人気があるマイリー・サイラスは、先日クラッカーの手によりメールアカウントをハッキングされ、15歳当時の過激な下着姿の写真がネットに流出するという、桜井"マッハ"速人もビックリの事件を起こした。それをパロディにしているというわけだ。

……が、そんな事を一瞬で理解して米人観客と一緒に笑える日本人はそれほど多くはないだろう。このあたりが、本作がアメリカ向けに作られていることを痛感させられる部分だ。

さらにいうとこの映画、相当グロ&下品&ブラックだ。そういうものが苦手な人には向いていない。

というわけで、米国芸能界に詳しい方、そのパロディを見たい方のみ、映画館にお出かけのほど。

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ディズニーのアイドルは、とことんネタにされる運命なんでしょうか。
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映画もいいが、サントラも抜群。


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