『特命係長 只野仁 最後の劇場版』70点(100点満点中)
2008年12月6日(土)より、丸の内ピカデリー2ほか全国ロードショー 2008年/日本/カラー/120分/配給:松竹
原作:柳沢きみお 監督:植田尚 脚本:尾崎将也 出演:高橋克典、櫻井淳子、永井大、蛯原友里、梅宮辰夫

タカビーキャラの西川史子いじめがエロい、映画版『特命係長』

『特命係長 只野仁 最後の劇場版』は、いわゆる"お気楽テレビドラマ映画"の範疇を出ていないが、下手に背伸びしようとしない分、好感の持てる娯楽作となった。

大手広告代理店の窓際係長・只野仁(高橋克典)のもとに、今日も会長から特命が下る。社運をかけた大イベントのキャンペーンガール(秋山莉奈)が身元不明の人物から脅されており、なんとしてもその身を守れというものだ。会社の汚れ仕事を引き受ける特命係長という裏の顔を持つ只野は、さっそくパートナーの森脇(永井大)と調査を開始するが……。

原作ファンの身からすると、このシリーズほど配役がめちゃくちゃなドラマ化はない。只野の同僚OLでヒロイン的存在の山吹を演じる蛯原友里や、セフレの新水アナ役・三浦理恵子など、どう解釈すればそういうキャスティングになるのだろうという例ばかりだ。

──が、高橋克典の強烈な個性がそうした違和感をすべて飲み込み、むしろ独自の世界の一部に取り込んでしまうという奇跡的な化学反応を巻き起こす。結果、これはこれでアリ的な出来栄えで、高い人気と視聴率を獲得することになった。

この映画版も、まるで昭和の深夜番組のようなお色気ムードたっぷりの、いかがわしいお下劣コメディとして路線踏襲する。

なにしろこの映画はサービスがよい。若い子好きには美尻グラドル"オシリーナ"こと秋山莉奈、熟女好きには西川史子のダブルヒロイン。二人とも映画ならではの大胆なセクシーシーンを演じてくれる。

別に若いオシリーナに興味がないわけではないが、とくにオススメなのが西川女医の濡れ場の数々。

ご存知のとおりこの人は役者じゃないから、セリフなどは棒読み。そんな彼女が、きっと監督に指示されているのだろう、恥ずかしいのを我慢しつつ無駄にエロい言い回しを口にする様子はとても色っぽい。無理やり言わされている感満載で、チョイSなマニア必見である。美女揃いの本作の女優陣の中でも、脱ぎっぷりの良さで一番というのも意外であった。

シリーズもうひとつの魅力、アクション面も満足。只野の行く手を阻むチェ・ホンマンの登場は、サービス満点の本作の中でも最大の見所。陽気なホンマンらしく、ダンスは踊るわバカキャラをうれしそうに演じるわで、観客を楽しい気分にさせてくれる。もちろん現役K1ファイターだから、只野との格闘シーンの迫力は桁違い。

最後に、主演の高橋克典についても賞賛しておきたい。ボンクラ係長モードでのパーティー場面におけるスーツ姿のみっともなさは、久々に腹が痛くなるほど笑わせてもらった。というか、あの場面で笑っていない人が試写室にいたのがいまだに信じられないのだが……。

ここまでバカをやってくれるから、特命モードでのカッコよさも素直に受け入れられる。

だいたい、44歳にもなって堂々と上半身裸になり、プロのキックボクサーとアクションシーンを演じられる俳優がいったい何人いるだろう。その勇気と、普段からのたゆまざる努力には、心より感服する。こうしたプロの役者魂は、映画全体の満足度を大いに高めてくれる。



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