『最強☆彼女』30点(100点満点中)
My Mighty Princess / 武林女子大生 2008年11月29日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー 2008年/韓国映画/115分/提供:アミューズソフトエンタテインメント/フィールズピクチャーズ 宣伝協力:マジックアワー 配給・宣伝:エスピーオー
監督・共同脚本:クァク・ジェヨン 脚本:イ・シンホ 武術監督:ディオン・ラム 出演:シン・ミナ、オン・ジュワン、ユゴン、イム・イェジン

"猟奇的"から"最強"へ?! クァク・ジェヨン監督の彼女シリーズ最新作

『最強☆彼女』は、『猟奇的な彼女』や『僕の彼女はサイボーグ』で知られる韓国の巨匠クァク・ジェヨンによる、トンデモ系ラブコメ最新作。韓国映画史上に残る超大作『D-WARS ディー・ウォーズ』と同週に公開するとは、日本の配給会社も粋なことをする。韓国映画ウォッチャーにとっては、どちらも見逃せまい。

女子大生ながら武術の達人であるソフィ(シン・ミナ)は、しかし今時そんな才能を生かせる場などあるはずもなく、怪力部で人並みはずれたパワー芸を披露し、全学生からドン引きされる日々であった。そんな彼女が、あるときイケメン学生のジュンモ(ユゴン)に一目ぼれ。彼を追ってアイスホッケー部に入部すると、猛烈なアタックを開始する。

綾瀬はるかのサイボーグ映画のように途中で激しく転調し、武侠アクションの見せ場が次々と現れる。──が、ワイヤーワークによる滞空チャンバラはありがちで、10年ばかし時代遅れ。本作で武術監督を務めるディオン・ラムは、マトリックスシリーズの振り付けをしたユエン・ウーピンの同僚で、それなりに実績はあるが、彼の殺陣はもはや15番煎じくらいの印象で新鮮味はまったくない。

そもそもクァク・ジェヨン監督にして、武侠をやりたいのかプロジェクトA子をやりたいのかはっきりしない。というより、大してこだわりもなくほかに思いつかないから採用したような、煮え切らなさを感じる。

アクションのみならず、ギャグもラブもお涙も中途半端。サイボーグ綾瀬ほど突き抜けてないから、トンデモ珍作にもなり切れない。これでは到底、持ち味を出しきったとはいえないだろう。主演のシン・ミナの演技がハジけており、それなりに健闘していたので余計に残念だ。この監督は、ヒロインをかわいく見せる力だけは、さすが図抜けたものがある。ツンデレかノータリンか変人ばかりだが……。

また、相手役になるかと思わせる男が途中からすっかり消えてなくなるなど、男キャラをなんとも思っていないテキトーさがいかにもクァク・ジェヨン作品らしく、笑わせてくれる。

転調に伴うグダグダな流れをすっきりさせてくれれば、もうすこし見られる作品になったと思うが、ときすでに遅し。この程度では、韓国ウォッチャーのほとんどは『D-WARS ディー・ウォーズ』に流れてしまうだろう。



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