『ハロウィン』70点(100点満点中)
HALLOWEEN 2008年10月25日(土)より、お台場シネマメディアージュ他 全国ロードショー 2007年/アメリカ/カラー/109分/R-15/配給:ザナドゥー
監督・脚本・プロデューサー:ロブ・ゾンビ 出演:マルコム・マクダウェル、ウィリアム・フォーサイス、シェリ・ムーン・ゾンビ

ジョン・カーペンター監督の有名殺人鬼ホラーをリメイク

オリジナルの78年版『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督)は、なんといっても殺人鬼映画の金字塔であり、のちに『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といった大ヒットシリーズを生み出す源泉にもなった。今回のリメイクも、力の入った本格的ホラー映画で、大のホラーマニアとしても知られるロブ・ゾンビが脚本と監督を担当した。

イリノイ州、ハロウィンの夜。孤独な少年マイケル(ダエグ・フェアーク)は、家族に魔の手を振るう。ルーミス医師(マルコム・マクダウェル)の手にゆだねられたマイケルは17年後、精神病院から脱走して故郷に向かう。

オリジナルもリメイク版も、怖さのポイントは「混乱」ではないかと私は考える。じつのところ、重大な箇所をロブ・ゾンビは変更しているのだが、このツボ部分はきちんと押さえている。少々異なるやりかたで客を混乱させ、原版と似たような後味の悪さを残している。伝統とも言うべき傑作メロディはいつまでも耳に残り、ぞっとする思いを胸のうちに残しながら、私たちは席を立つことになる。

この変更について、監督はスタジオ側ともめながらも主張を通した。前半、やけに丁寧に殺人鬼の少年時代を描いているなと思ったが、なるほど重要な布石を打っていたわけかと納得した。

余談だが、少年時代のマイケルの熱演はこの映画の大きな見所である。むしろ、ブギーマンよろしく大虐殺を繰り広げる成長後よりも不気味で怖い。

オリジナル同様、新『ハロウィン』は、のちの「殺害シーンがギャグ」になる殺人鬼ものとは一線を画したガチンコ恐怖映画。キチガイならではのルールが通じぬ恐ろしさ。鑑賞後も疑問に思わざるを得ない、何をしたいのかまるで不明な行動原理は、こちらの心をかき乱し、恐怖の余韻を残す。

『13日の金曜日』のジェイソンのように、もはやマスコットになってしまったキャラクターと違い、あくまでリアルな人間として殺人鬼マイケルを演出したロブ・ゾンビ監督の狙いは、クライマックスでしっかり実を結ぶ。

これを実際ハロウィン(10月31日)に見られる日本の観客は幸せだ。あの後味の悪さを当日に擬似体験することを幸せと呼ぶとしたら、の話だが。



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