『フレフレ少女』15点(100点満点中)
2008年10月11日(土)より、丸の内ピカデリー2ほか全国ロードショー 2008年/日本/カラー/114分/配給:松竹
監督:渡辺謙作 脚本:橋本裕志 主題歌:Aqua Timez 出演:新垣結衣、永山絢斗、柄本時生、斎藤嘉樹

新垣結衣が応援団長に

『フレフレ少女』は、学ラン姿の新垣結衣を見れるだけで幸せという人にとっては、本年度最高の映画である。

高2の文学少女・桃子(新垣結衣)は、あるとき野球部のエースに恋をする。だが、ライバル多数で野球部には近づけない。そんな桃子の耳に「あきらめるな」との天の声が。それを追い屋上へ行くと、たった一人で声出し中の応援団部員・龍太郎(永山絢斗)がいた。応援団として野球部を見守るのもアリかと思わず入部した桃子だったが、いきなり部員不足で廃部の危機に見舞われる。

学ラン姿の新垣結衣を見れるだけで幸せという人にとって本年度最高の映画『フレフレ少女』は、しかしいくつか問題点がある。

たとえばストーリーはありきたりだし、せっかく応援団という珍しい題材を扱いながら、その魅力が伝わらない。ライバル校の応援団は本格的な応援を見せてくれるが、それに対抗するガッキー応援団は、最後まで素人の寄せ集めにしか見えない。男の世界たる応援団とは正反対の大人しい少女が、一皮向けて男勝りの大活躍をするという筋書きが、まったく成立していない。

もっとも新垣結衣はデカいので、男部員と並んでも体格的に遜色がなく、細い手足を振り回す振り付けは様になっている。それが唯一の救いだが、やっぱり声が細いし、オンナノコオンナノコした表情がどうしても抜けきらない。恋する少女だけなら似合うものの、もう一面演じる必要があるこの役には無理がある。

こういう場合、せめて音響や撮影、編集のテクニックによって補ってやれば何とか形にはなる。だが本作では、監督がそういう支援をしていないので、すべての評価、責任が新垣結衣一人の背中にのしかかっており、気の毒この上ない。

彼女以外のキャラクターは、冗談半分で考えたような造形がなされており、観客を唖然とさせる。テレビドラマ並の子供じみたやり取りが、目前のスクリーンになんと有料で映されている事に、きっと誰もが驚くはず。

特筆すべきは、ふがいない応援団と対立することになる野球部の面々。「俺たちは甲子園を目指してるのに、お前らの気の抜けた応援なんていらねえ!」というわけだが、そのプレイはどう見てもこども野球クラブ以下。荒川の河川敷でやってる草野球の方がはるかに上だ。

そもそも日本の観客には野球シーンの手抜きはすぐにバレるので、手をかける暇と予算がないなら、無理せずラクロスでもカーリングでも、アラが見えにくいマイナー競技にしたほうがよろしい。この作品は応援団がメインなのだから、応援する相手が野球部である必要はない。

かような出来栄えだが、せめて入浴シーンでガッキーがあと7cmほど立ち上がってくれていたならば、学ラン姿の新垣結衣を見れるだけで幸せという人以外にもすすめられる映画になったのだが。つくづく残念でならない。



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